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原発システム構成と問題点|燃料棒と一次冷却水(温度上昇)、圧力容器(脆化)、制御棒(脱落)

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原子力発電は、化石燃料と比べると、僅かな燃料で大きな電力を発電できるという長所を持つ反面、危険な核燃料を扱わねばならぬという面もあり、危険な核物質を外界と遮断するために、何重ものシールド構造をした機械システムとなっている。そして、機械システムである以上、その構造上の、そして使用材料の性質に起因する様々な問題点を持っている。以下、それらの問題の主要なものについて述べることとする。

原子力発電システムの詳細(機械装置としての視点から)

ここでは、沸騰水型原子力発電(BWR)を取り上げ、その構造を少し詳細に説明することとする。

図1は沸騰水型原子炉(BWR)のしくみを示したものである。図1については以前に大まかな説明をしたので、今回は他の関連する図も含めて少し詳細に説明する。

図1. 沸騰水型原子炉のしくみ(関西電力HPより)

図2.燃料集合体と燃料棒

燃料棒と一次冷却水

図1の核燃料の箇所には燃料集合体(図2左)が700~800本挿入されており、燃料集合体1個は約63本の燃料棒(図2中)を束ねたものである。また燃料棒は壁厚1mm未満のジルコニウム(Zr)製の円筒状の鞘の中に酸化ウラン(ペレット(図2右))を段積みし、上部からスプリングで押さえ栓をしたものである。

図1の圧力容器内には一次冷却水が循環している。一次冷却水は燃料を冷却するだけでなく、燃料の核分裂反応熱で蒸気となりタービンへ送られ、発電機に直結されたタービンを回して電気を起こす。

一次冷却水は炉心の温度が一定温度(約300℃)以上にならぬよう、毎秒3mという速さで循環しているが、これは燃料棒の鞘のジルコニウムが400℃くらいから変形しやすくなること(クリープ変形)、さらに850℃以上になると水と激しく反応(発熱反応)して水素を発生するという性質を持つためである。

福島原発事故では管路等の破損から圧力容器内の水位が低下し、一次冷却水の温度が850℃を超え、ジルコニウムが水と反応して大量の熱を発生して炉心溶融の一因となった。さらにその時発生した水素が水素爆発を起こして建屋を吹き飛ばしている。

一次冷却系は圧力容器とタービンを結ぶ配管(タービン、復水器も含む)で構成されるが、この配管中には圧力容器内の放射性物質が(事故の場合は大量に、通常でも少量は)漏れ出て来る。

一次冷却系においては、高温高圧の流体が高速で流れるため管壁内面の浸食が大きく(特に管径が大きく変化する個所や曲がりのある個所で壁厚が薄くなって行く)、さらに圧力容器のような強度が無いため外部からの力で比較的容易に変形したり破損したりする。従って、地震などの自然災害、テロなどの人為的行為で容易に破壊するという問題がある。

制御棒

原子炉の中では核分裂によって生じた中性子が大量に存在し、この中性子が次々とウランの原子核に衝突し、核分裂の連鎖反応が継続される。中性子の数が多ければ多いほど核分裂規模が大きくなり、中性子の数を減らせば核分裂規模が小さくなる。

原子炉の中の中性子数を一定の数に保ち、核分裂を所要のレベルで安定的に継続するだけの中性子数に制御するのが制御棒の役目である。この制御棒を原子炉の中に深く挿入すれば原子炉内の中性子数は減少し核反応規模(出力) は小さくなる。逆に挿入を浅くすれば原子炉内の中性子数が増大し核反応規模(出力)は大きくなる。

このように制御棒は、原子炉中の核分裂連鎖反応を制御する機能を有しているが、何らかの原因で制御棒の位置制御ができなくなったり、制御棒が脱落して炉外に落ちてしまったりすれば、核反応は暴走し大惨事(炉心溶融=メルトダウン)となる可能性が高い。チェルノブィリの事故はその一例である。

圧力容器と脆性破壊

圧力容器は炉心の入れ物であり、内部の高温高圧に耐えながら外部との間に一次冷却水を流通させる茶筒状をした鋼鉄製の構造物である。沸騰水型原子炉の圧力容器は100万kW級で高さが約22m、内径が約6.4m、壁圧が30cm程である。

金属は、常温では外部からの力に対して割れたりすること無く容易に変形(曲がったり伸びたり)する(展延性)。このように室温で粘り強い材料の性質が低温になると変化して脆くなることを低温脆性といい、このような現象が鋼で起こることはよく知られている。

このように、温度を下げて行くと物質の性質が急に脆くなる(金属では展延性が無くなり脆性に変化する)温度を脆性遷移温度という。脆性遷移温度以下では衝撃的な力が加わると壊れやすくなるが、原子炉を運転することで中性子の照射が続くと、圧力容器の脆性遷移温度が次第に上昇していくという問題がある。

事故によって圧力容器内の一次冷却水の水位が低下すると緊急炉心停止装置が作動するが、その場合、炉心の温度上昇を防ぐため圧力容器内に大量の水が投入される。この時投入される大量の水が、室温レベルの水、或は海水であることを考えれば、脆性遷移温度の上昇した圧力容器に大きな割れが生ずる可能性は極めて高い。

圧力容器に割れが発生すれば、原子炉内の高レベル放射性物質が外界に放出されることとなる。以下の表は、大災害に繋がる原子力発電の重大事故を原因となる構造物の要素で分類し、記載したものである。

表.原子力発電の重大事故

区   分 現    象 原 因
制御棒 制御棒引き抜き事故 制御系の不具合や誤作動等により、制御棒が急速に引き抜かれることにより、核反応が暴走する。 装置の不具合、誤操作
制御棒逸失事故 制御棒駆動系の破損により、制御棒が炉心から逸失し、核反応が暴走する。 装置の不具合、誤操作
地震等の災害
テロ、戦争
制御棒落下事故 BWRのように制御棒が炉心の下部から挿入される構造では、何らかの理由により制御棒が炉心から落下し、核反応が暴走する。
冷却材 冷却材喪失事故(一次冷却系の破断) 一次冷却系が破断するような事故が起これば、冷却材の一部または大部分が短時間に炉外に放出され、炉心温度が上昇し、最悪の場合は炉心溶融に至る。 装置の不具合、誤操作
地震等の災害
テロ、戦争
非常用炉心冷却系事故 冷却材喪失の時、非常用炉心冷却系が作動しなければ、炉心温度が上昇し、ついには炉心溶融に至る。冷却系が作動した場合でも、ジルコニウム―水反応、水素爆発が起こる危険性大。
圧力容器 脆化によるひび割れ、破壊 緊急時、大量の水を供給した場合、脆化した圧力容器が破損する危険性がある。
破損した場合、破損の程度にもよるが、最悪の場合は圧力容器内の放射性物質が大量に炉外に放出される。
核分裂反応で発生する
中性子照射により圧力容器の脆性遷移温度が上昇する

語句の説明

①一次冷却系 ・・・ 原子炉、原子炉からタービンまでの往復の管路、タービン、復水器の一次冷却水が流れる部分とその流れを制御する機器を言う。

②制御棒   ・・・ 中性子を吸収しやすい材料でできており、制御棒を炉内に深く挿入すれば炉内の中性子数が減少して核反応規模が小さくなり、逆に制御棒を引き抜けば炉内の中性子数が増え核反応規模が大きくなる。

③金属の脆性破壊・・・常温で強度のある金属が脆性遷移温度以下になると展延性を無くし小さな力で破壊すること。挙動変化のイメージとしては、常温で触れればしなやかに変形するバラの花びらがマイナス50℃で触れれば粉々に砕けてしまうのに似ている。但し、バラの花びらは花弁中の水が凍ることが原因であるのに対し、金属の低温脆性は金属原子間の滑りが困難になることが原因であるという違いがある。

④緊急炉心停止装置・・何らかの原因で炉内の一次冷却水の水位が下がり、炉心温度が上昇し制御できなくなった時、炉外に緊急用に溜めてある水を炉内に注入する装置。福島原発事故ではこの装置も機能せず、海水を注入することとなった。

補足

原子力発電方式としては上述の沸騰水型以外に加圧水型がある。両者のおもな違いを付表に示す。

付  表

加圧水型(PWR) 沸騰水型(BRW)

冷却系(冷却水)

1次系 原子炉、蒸気発生器間で循環(1次系は気化しない) 原子炉、タービン間で循環(原子炉が蒸気発生器を兼ねる)
2次系 蒸気発生器、タービン間で循環 海水を循環し1次系を冷却
3次系 海水を循環し2次系を冷却 なし
制御棒 原子炉上方より原子炉内に挿入 原子炉下方より原子炉内に挿入
特 徴 放射性物質が海水中に出にくい 放射性物質が海水中に出やすい

(注)最近では、PWRの2次系と間違い易いことから、BWRで2次系と表現しないことが多い。

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