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並進運動
並進運動とは物体が回転運動を伴うことなく直線軌道を移動することである。直線コースを走る車、直線軌道を走る列車などの運動が並進運動に該当する。
(注)上記車や列車の直線軌道における運動の場合でも、進行方向とは異なる方向のブレや振動が加わるので、厳密な意味では並進運動のみではないが、それらは進行方向に比べ微小量であるので無視し、並進運動として扱うのが運動解析上便利である。
並進運動における運動方程式
並進運動におけるニュートンの運動方程式は、物体に働く力を$F(N)$、物体の質量を$m(kg)$、物体の加速度を$a(m/s^2)$とするとき、
$F=ma$ ・・・・・・・・・①
で表される。ここで物体の位置をある起点からの距離$s(m)$で表せば、上記加速度$a$は、位置$s$の時間による2回微分(式②)で表される。
$a=\dfrac{d^2s}{dt^2}$ ・・・・・・②
①式と②式から、並進運動におけるニュートンの運動方程式は次のようにも書ける。
$F=m \dfrac{d^2s}{dt^2}$ ・・・・・・③
ニュートンの運動方程式から、物体に力が作用すると物体は加速度を持つ。すなわち速度が変化する。逆に、物体に力が作用しなければ物体は同じ状態を維持し続ける。静止している物体は静止状態を保ち、等速運動している物体は等速運動を維持する。これが慣性の法則である。
回転運動とは
ここでいう回転運動とは物体がある固定軸まわりに回転する運動をいう。自動車の車輪、機械装置内の歯車やカム、ロボットアームの回転などはみな固定軸まわりの回転運動である。
回転運動における運動方程式
回転運動における運動方程式は、物体に働くトルクを$M(kgm)$、物体の慣性モーメントを$I(kgm^2)$、物体の回転軸まわりの各加速度を$ \dfrac{d^2θ}{dt^2} (radian/s^2)$とするとき、
$M=I\dfrac{d^2θ}{dt^2}$ ・・・・・④
で表される。ここで慣性モーメント$I$は、回転する物体の質量を$m(kg)$、回転軸からその物体までの距離(回転半径)を$r(m)$とするとき、図1のような場合には、
$I=mr^2$ ・・・・・⑤

のように表され、図2のような体積Vの剛体の場合には、
$I=\int_{\mathbb{V}}r^2dm$ ・・・・・⑥
のように表される。⑥の右辺は、剛体の微小部分$dm$とその微小部分の回転軸からの距離$r$の2乗の積を、剛体Vの全てにわたって積分した値を示している。

図3は図2と同じ体積Vを持つ(比重も同じ)剛体であるが、図2の剛体に比べ軸方向の長さが短く、その分最大径が大きな形状をしている。慣性モーメントの定義式⑥によれば、同じ体積と密度の剛体であっても、軸まわりの径が小さいほど慣性モーメントは小さい。したがって、④式から、両者に外部から同じトルクを与えれば、慣性モーメントの小さい図2の剛体の方が回転加速度 $\dfrac{d^2θ}{dt^2}$が大きくなり、早く高速回転に達する。フィギュアスケートの選手がジャンプして回転するとき、腕を胸前で抱え込んだり、頭上に上げたりするのは慣性モーメントを小さくして回転加速度を大きくし、瞬時に回転速度を上げるためである。

補足
実務面では、高速運動部分を持つ機械装置を設計したりする場合、可動末端部分を要求仕様通りに運動(直線運動や回転運動)させる必要があり、どのような速度曲線で制御するかを決定し、決定した速度曲線中の最大加速度や最大角加速度が求まる。ここから運動方程式を用いて、端末可動部まで伝える最大駆動力や最大モーメントが求まる。最後に必要駆動力や必要モーメントを伝えられるように、材料力学や有限要素法などを用いて駆動部から末端までの駆動力伝達部品の設計をしていく。設計には他にもいろいろな要素(熱、摩擦・摩耗、物性、寿命、強度など)が加わり、実際は複雑ではあるが、運動学と強度学のみから見れば上記のように進められる。
駆動速度が小さく、大きな力やトルクを伝えるのが主となる、大型の重機やクレーンなどの機械装置は、運動解析よりも強度解析が問題であり、材料学や強度学の面から設計をすることになる。
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