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回転運動における運動方程式
並進運動においては物体に作用する力$F$は物体の質量$M$と加速度$a$の積に等しいというニュートンの運動方程式
$F=M×a$ ・・・①
が成立するが、これを回転運動とトルクの関係に拡張すると、物体に作用するトルク$T$は物体の回転軸まわりの慣性モーメント$I$と角加速度$\dfrac{d^2θ}{dt^2}$の積に等しいという回転運動の運動方程式
$T=I× \dfrac{d^2θ}{dt^2} $ ・・・②
が成立する。
したがって、機械装置の設計などにおいて、ある部品を所望の角加速度にするのに必要なトルクを求めるとき、その部品の慣性モーメントを知る必要がある。
慣性モーメント
慣性モーメント$I$の定義式は、
$I= \int_{\mathbb{V}}r^2dm$ ・・・③
で表される。ここで$r$は回転軸から微小部分までの距離(回転半径)、$dm$は微小部分の質量を、Vは物体全体の容積を表している。したがって、物体Vの慣性モーメントとは、回転中心から物体の微小部分までの距離の2乗と微小部分の質量の積を物体全体について積分したものを表している。
以下では、具体的形状の慣性モーメントを計算してみよう。
円柱
図1は半径$r$、紙面に垂直な方向の厚さ$h$、単位体積あたりの密度が$ρ$の円柱を示したものである。慣性モーメント$I$を求める③式をこの場合に適用すれば、③式の微小部分$dm$は $ρsdθds$と表されるから
$I=ρh\int_0^{2π}\int_0^r s^2 {sdθds}$
整理して
$I=ρh\int_0^{2π} dθ \int_0^r s^3ds$ ・・・④
④式の右辺を計算すれば、
$I= \dfrac{1}{2} πρhr^4$ ・・・⑤
ここで$2πρhr^2$が円柱の質量$M$であることから、円柱の慣性モーメントを円柱の質量$M$を用いて表せば、慣性モーメントは
$I= \dfrac{1}{4} M r^2$
と表される。これより、円柱の慣性モーメントは、同質量の円柱であれば、円柱の半径$r$の2乗に比例することがわかる。

六角柱
次に図2に示すような紙面に垂直な方向の厚さ$h$、単位体積あたりの密度が$ρ$の六角柱の軸まわりの慣性モーメントを求めてみよう。図のような直交座標で考えれば、③式の微小部分$dm$は、$ρ dx dy$と表され、 $r^2$は$x^2+y^2$と表される。
慣性モーメントは図の三角形$AOF$の$x$軸より上の部分を求めて12倍すれば求まるから、
$I=12ρh\int {(x^2+y^2)} dx dy$
整理して
$I=12ρh\int_0^b\int_0^\dfrac{x}{\sqrt 3} {(x^2+y^2)} dy dx$ ・・・⑥
⑥式をまず$y$について積分して
$I=12ρh\int_0^b (\dfrac{x^3}{\sqrt 3}+ \dfrac {x^3}{9 \sqrt 3}) dx$ ・・⑦
これを$x$について積分し整理すれば六角柱の慣性モーメント$I$は
$I=\dfrac{10}{3 \sqrt 3} ρhb^4$ ・・・⑧
ここで$\dfrac{6}{\sqrt 3} ρhb^2$が六角柱の質量$M$であることから、六角柱の慣性モーメントを六角柱の質量$M$を用いて表せば、
$I=\dfrac{5}{9} Mb^2$
となる。 これより、六角柱の慣性モーメントは、同質量の六角柱であれば、対辺間の距離の$\dfrac{1}{2}$すなわち$b$の2乗に比例することがわかる。

補足
機械設計や装置設計においては、求められる仕様から、可動部末端の1サイクルにおける加速度曲線や角加速度曲線を決定し、最大加速度や最大角速度が求まる。次に、可動部分の質量や慣性モーメントを算出し、最大加速度や最大角速度の積から、必要な力やトルクを求めモーターやエンジンの選定を行うという流れになる。
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