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金属の低温脆性 |常温で展延性を示す金属の強度が脆性遷移温度以下では急激に低下

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金属の強度が低温になると低下する低温脆性について、その温度依存性を示すとともに、中性子照射によって脆化が進行する照射脆性の機構、シャルピー強度試験の方法について記述した。

低温脆性

金属は周知のように常温では強度が高く、大きな力が加わっても割れることなく容易に変形する。

金属のこのような性質を展延性(てんえんせい)と言い、常温において金属は強度と展延性を持っている。

しかし、何れの金属も温度を下げて行くと強度が低くなるとともに脆くなる(小さな力で割れやすくなる)。この低温(通常は氷点下)において金属の強度が低くかつ脆くなることを低温脆性(ていおんぜいせい)と言っている。

炭素鋼の強度の温度による変化

図1は温度変化によって炭素鋼の強度がどのように変化するかを示したもので、横軸は温度℃を、縦軸は強度(シャルピー衝撃値)を表わしている。

図中の曲線に記載してある%Cは炭素鋼に含まれる炭素含有量(重量%)を示している。図から、炭素含有量によって強度変化の様子は異なっているものの、何れの炭素鋼も低温になると強度が大きく低下していることが分る。

図1.炭素鋼の強度の温度による変化

脆性遷移温度と照射脆化

強度が、常温における強度(最大値)と、低温における強度(最小値)の中間値になる温度を脆性遷移温度(ぜいせいせんいおんど)という。図から、金属により最大値から最小値に変化する温度幅(⊿t)にも狭いものと広いものがあり、金属によって異なっている。

図中の炭素鋼について言えば、0.04%Cの炭素鋼と0.11%Cの炭素鋼の脆性遷移温度は何れも-40℃であるが、上記温度幅⊿tは0.04%Cの炭素鋼が40℃の幅であるのに対し、0.11%Cの炭素鋼では80℃の幅となっている。このように低温になると強度(衝撃値)が低下するのは、(金属原子の運動エネルギーが低下して)金属原子間の滑りが困難になることに起因している。

この金属の脆性遷移温度は通常あまり変化しないものであるが、中性子照射を浴びることで徐々に高温側へと移動して行く。これは照射脆化(しょうしゃぜいか)と呼ばれ、原子力発電の圧力容器にとって重大な問題である。

金属の脆化のメカニズム

図2.照射脆化のメカニズム(原発老朽化問題研究会資料より)

図2は脆化のメカニズムを原子レベルで示した図である。図中の青い丸は金属原子を表し、赤い丸は中性子を表している。白い丸は、原子が飛ばされて空になった(空孔の)状態を表している。

圧力容器の中では、ウランの核分裂が起こっており、炉心に近い圧力容器の胴部分では、中性子照射量が大きくなる。この中性子照射により、圧力容器の金属において、金属原子配列(結晶格子)の定位置から金属原子が跳ねとばされ空孔ができたり、原子と原子の間に割り込んだり(格子間原子)することとなる。

空孔や格子間原子が成長してひと塊り(クラスター)になると、外から力が加わったとき、金属原子間の滑りが起こりにくくなり金属は変形しにくくなる。このようにして金属の展延性がなくなって行く。これが金属の脆化(ぜいか)である。

力が小さいうちは問題ないが、ある大きさ以上の力がかかると、割れが生じ、それが急速に成長し、ばりっと壊れてしまう。これが脆性破壊(ぜいせいはかい)である。

強度試験方法

図3.強度試験法(シャルピー衝撃試験)

図3は金属の強度試験(シャルピー衝撃試験)の方法を示した図である。

中央部にノッチ(切欠き)を入れた試験片を支持台に固定し、振り子状に吊るした刃を振り上げて離し試験片に衝突させる。

試験片が切欠き部で破断した時、振り子の振り上げ高さと破壊後の振り子の到達高さの差(位置エネルギーの差)が破断に要したエネルギー(単位:kgm)で、これを切欠き部の断面積で除した値(単位:kgm/cm2)がシャルピー衝撃値(図1の縦軸の値)として求められる。

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