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日本の原発|中性子照射による金属の脆性遷移温度上昇、原発の使用年数と脆性遷移温度の実態

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中性子照射によって金属の脆性遷移温度がどのように上昇するかについて、日本各地の原発の使用年数、複数の原発における脆性遷移温度上昇の実態について記述した。

中性子照射による金属材料の脆性遷移温度上昇

一般に材料は、金属を含め、低い温度の方が脆くなる。ところが、中性子を浴びつづけると、脆性破壊の起こる温度が上昇してくる。そのために、圧力容器が急に冷やされたとき、生じた熱応力によって割れてしまうおそれがある。

図.中性子照射量と脆性遷移温度上昇量(原子力資料情報室資料より)

図は原子炉材料の脆性遷移温度が中性子照射量によって上昇することを示したデータである。

横軸目盛りが中性子照射量(1cm2当たりの中性子照射量を10の19乗で除した値)を表わし、縦軸は照射しない場合(初期値)からのシャルピー試験による脆性遷移温度(表記RTNDT/K)の温度上昇量(⊿RTNDT/K)を表わしている。

図中枠内の記号BWRは沸騰水型原子炉圧力容器を、PWRは加圧水型原子炉圧力容器を表わしている。また、BMは母材(base metal)をHAZは溶接熱影響粗粒域(heat affected zone)を表わしている。

原発事故で大量の水が原子炉に投入されるときが危険

原発事故などの緊急時、脆性遷移温度が上昇した圧力容器に、(脆性遷移温度以下の)水や海水等が大量に圧力容器内に投入されると、圧力容器は小さな力で割れてしまうおそれがある。

圧力容器は運転中は、冷却水の内圧ばかりでなく、内外の温度差に起因する熱応力が加わっている。緊急停止時にも熱応力が残存しており、非常に危険である。

この脆化対策として、圧力容器内には数組の監視試験片が置かれていて、決められた時期に取出して脆性遷移温度の変化をチェックしている。

日本各地の原発の使用年数

表1は日本各地の原発の運転開始年月日と運転開始から2017年6月までの経過年を記載した表である。表から明らかなように、現時点では、多くの原発が使用期限の40年を超えたものばかりである。

表1.原発の運転開始日及び経過年(原発老朽化問題研究会資料参照)

原子炉 会社 出力(万kW) 運転開始年月日 経過年
敦賀1 原電 35.7 1970-3-4 47
美浜1 関電 34.0 1970-11-28 46
福島第一 1 東電 46.0 1971-3-26 46
美浜2 関電 50.0 1972-7-25 45
島根1 中国電 46.0 1974-3-29 43
福島第一 2 東電 78.4 1974-7-18 42
高浜1 関電 82.6 1974-11-14 42
玄海1 九電 55.9 1975-10-15 41
高浜2 関電 82.6 1975-11-14 41

経過年2017年6月時点での経過年

日本の原発における脆性遷移温度上昇のようす

表2は上記原発の内、敦賀1、福島第一1、美浜1、美浜2、玄海1の四つの原発のそれぞれにおいて、圧力容器の母材の脆性遷移温度が使用経過とともにどのように上昇したかを示したものである。

表中の照射量の単位は1立方センチメートル当たりの中性子数を10の19乗で除した値である。従って、実際の数値は表中の値を10の19乗倍した数である。指数表記が出来ないため、指数19を()内の数値として記載した。

表2.原発における脆性遷移温度の上昇(原発老朽化問題研究会資料参照)

原子炉 初期値 1 2 3 4
美浜1 取出年月 73/3 81/6 93/4 01/5
照射量 0 0.6 1.2 2.1 3
脆性遷移温度 -1 45 51 71 74
美浜2 取出年月 75/2 80/12 91/4 03/9
照射量 0 0.8 1.9 3.1 4.4
脆性遷移温度 -3 49 59 72 78
玄海1 取出年月 76/11 80/4 93/2 09/4
照射量 0 0.54 2.1 3.47 7
脆性遷移温度 -16 35 37 56 98

温度単位:℃、照射量単位:10(19)n/cm3

表2の美浜1号機の運転開始は1970年11月であり、この時点における圧力容器母材の脆性遷移温度の初期値は-1℃であるが、それから31年が経過した01年5月には脆性遷移温度が74℃まで上昇している。

表2の美浜2号機の運転開始は1972年7月であり、この時点における圧力容器母材の脆性遷移温度の初期値は-3℃であるが、それから31年が経過した03年9月には脆性遷移温度が78℃まで上昇している。

表2の玄海1号機の運転開始は1975年10月であり、この時点における圧力容器母材の脆性遷移温度の初期値は-16℃であるが、それから約35年を経過した09年4月には脆性遷移温度が98℃まで上昇している。

以上のように、何れの原発においても、使用開始から時間が経過するに従って、即ち中性子照射量の積分値が増大するに従って圧力容器の脆性遷移温度が上昇していることが分る。

偏西風帯域にある日本

中緯度にある日本は偏西風帯域にあり、上空には常に強い偏西風が吹いている。事故が起これば大量の放射性物質が東側へと運ばれる。福島原発事故で大気中に放出された放射性物質による陸地の汚染は遠く北米大陸全域まで広がっており、海洋の汚染は北太平洋全体へと拡散している。

福島原発の東側が海であったこと、首都圏が福島原発の東側でなかったことは不幸中の幸いであるが、関西電力の原発群は高浜原発も含め若狭湾に集中し、その東側に関西圏の水がめである琵琶湖、さらにその東に名古屋を中心とする中京圏がある。高浜原発で福島級の事故が起これば、関西圏、中京圏の放射能汚染を免れないことは予測できることである。

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