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微分とは何か?|微分の概念は「速度の概念」を変えた

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微分とは何か?|微分の概念は「速度の概念」を変えた

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微分がわからなくても心配するにはあたらない

微分を理解できなくても自信を失うことはない

 十年以上前頃であろうか、よく耳にしたのが分数がわからない高校卒業生がいるとか、高校数学が理解できない大学卒業生がけっこういるとかいう声である。また、私の周囲でも微分・積分がわからなかったという声をよく耳にする。しかし、仕事で科学技術に携わらないのであれば、微分・積分が理解できなかったとしても自信を失うにはあたらない。

十数世紀にわたる数学史を経て確立された微分・積分を短時間の高校数学の授業で理解するのは難しいのが当たり前

 微分・積分を学ぶのは高校数学であり、微分に関して言えば、講義時間はせいぜい5時間から10時間くらいであろうか。微分・積分は、古代ギリシア数学から始まり、様々な発見と発達の数学史を経て、17世紀に至ってニュートンやライプニッツによって確立された数学(解析学)の概念である。多くのその道の先人たちが長い時間をかけて確立してきた概念を、高校2年生の数学の授業で全員に理解させようとすることには無理がある。先生の理解度と説明の問題もあるし、理解できない生徒がいても何ら驚くにはあたらない。

 本記事は、微分など数学の概念が理解できない人が概念を理解するきっかけとなればと思い書いたものである。したがって、本記事は数学の得意な人や、高校数学を理解している人には無用の記事である。今回は、微分の概念を理解出来なかった人が、その概念を理解できるようになることを目的として書いたものである。

速度の概念は時代とともに変化

駕籠や馬を交通手段とした時代

 馬や駕籠が乗り物であった時代、今で言う速度という概念は日常的にあまり考えられなかったと思われる。人々は、江戸から尾張まで馬で何日という所要日数、日本橋から神田まで馬で何刻(なんとき)という所要時間という意識が普通で、駕籠や馬の走る速さ自体を意識することは通常は無かったと思われる。

馬車 - Wikipedia
図1.馬車(ja.wikipedia.orgより引用)

 同時代のヨーロッパにおいても、産業革命で蒸気機関車が出現する前の馬が主な交通手段であった時代は同様であったと思われる。

 何れの場合も、瞬間速度を測定する機器は無く、速度を意識することはごく稀な場合を除いて無かったわけである。当時、速度を意識したのは、競争相手がいた場合で、戦場での逃げ手と追っ手、狩り場や競馬など、相手より速く走ることが求められる場合に、相対的な速さ(相手より速いか遅いか)という意味で速度という概念があったものと思われる。

 また、同じ目的地にどれだけの時間で到達できるかという意味での速度の概念はあったと思われるが、現在でいうところの速度というよりは、2点間を通過する所要時間で距離を除した平均速度が当時の速度の概念であったと思われる。当時の会話は次のようなものであったろう。

殿「彦左衛門、次の宿場の三本松まで馬がけしようではないか」
彦左「まだまだ殿には負けませぬぞ」
殿「じゃあ、儂を負かせてみよ、参るぞ、それ!」
彦左「相手が殿とて負けはしませぬぞ、それ!」
 ・・・・・・・・・・・・・・・
殿「彦左、おぬしは遅いのう、もう何刻(なんとき)待ったことであろうか」
彦左「殿、ずるいですぞ、私は殿の荷物も持っている故、馬が走りずろうございますがな」
殿「それじゃあ、まだ日も明るいし、次の宿場の入り口まで競争し直そうではないか。今度は儂が彦左の荷物も持ってやろう。では参るぞ」
 ・・・・・・・・・・・・・・・
殿「彦左、荷物を儂が持ってもやはりおぬしが遅いではないか」
彦左「殿が荷物を持ってくださたのは良かったのですが、その荷物から人参が転げ落ち、私の馬が走るのを止め、人参を食べ始めたので遅れたのでございます」
殿「それは申し訳ないことをしてしまったのう」
彦左「ひょっとして、殿がわざと人参を落とされたのですか」
殿「・・・・・・・・・・・」

というような具合で、どちらが速い遅いという意識はあっても、速度がどれだけとかいう意識は無かったであろうと思われる。

 微分法が確立された後も、蒸気機関車や自動車など、機械的駆動力で車輪を回す乗り物が出現するまでは同じような状況が続いたものと思われる。

蒸気機関車や自動車が出現した後の時代

 蒸気機関車や自動車など、蒸気機関や内燃機関で車輪を回す乗り物が出現すると、車軸に回転計を付けることで刻々変わる速度の計測が容易に出来るようになった。すでに確立された微分法に計測法(計測器)が加わって、瞬間速度という概念が社会全体に浸透していったものと思われる。

メルセデス・ベンツ - Wikipedia
図2.ダイムラー・ベンツ(ja.wikipedia.orgより引用)

 科学技術が発達した現在では回転式速度計以外にも様々な速度測定法が開発されている。ミサイルや野球のボールなど飛翔体の速度測定には光学式速度計測装置があり。大気中を移動する飛行機などではベルヌイの定理に基づくピトー管等が用いられている。

微分の概念の解説

平均速度から瞬間速度へと速度の概念が変化

 以下、図を用いて測度の概念の変化を説明する。図で横軸は時間を表し、縦軸は位置を表すものとする。両軸の交点はそれぞれのゼロ点、すなわち原点である。図には曲線 y=f(t) が描かれているが、この曲線は運動体A(人や車など)が時刻tでどの位置にあるか、すなわち、時刻の変化によって位置がどのように変化するかを示している。

 いま、運動体Aの位置が時刻$t_1$で$y_1$(P点)にあり、時刻$t_2$で$y_2$(Q点)にあったとしよう。運動体AがP点からQ点に移動するに要した時間は$t_2-t_1$であり、移動距離は$y_2-y_1$である。したがって、この間の平均速度は$\dfrac{y_2-y_1}{t_2-t_1}$で求まる。これは直線PQの傾きに一致している。
 瞬間速度という概念があまり必要とされなかった時代は、速度と言ってもこのような平均速度がわかれば十分で、のんびりとした良き時代であったように思われる。

ここで$t_2$を$t_1$に近づけていけば直線PQの傾きはP点における曲線の接線MNに近づいていく。以下、これを数学的に行っていこう。

図3.平均速度と瞬間速度(微分係数)

微小区間の平均速度の極限値

 いま、時刻$t_1$から$δt$だけ時間が経過した時刻$t_1+δt$における運動体Aの位置が$y_1+δy$(P’点)であったとする。運動体AがP点からP’点へ移動するのに要した時間は$(t_1+δt)-t_1=δt$であり、運動体の位置変位は$(y_1+δy)-y_1=f(t_1+δt)-f(t_1)$である。したがって、PP’間の平均速度は$\dfrac{ f(t_1+δt)-f(t_1) }{ δt }$であり、ここで$δt$をゼロに近づけていく(P’点をP点に近づけていく)と曲線$y=f(t)$のP点における接線の傾き、すなわちP点における瞬間速度が求まる。

具体例

 曲線が一般式$y=f(t)$で与えられている場合は、これ以上は求められないので、$y=f(t)=at^2$の場合を考えてみよう。この場合、

$ f(t_1+δt)-f(t_1) =a( t_1+δt )^2-t_1^2=a(t_1^2+2t_1δt+δt^2)-at_1^2=2at_1δt+aδt^2$ ・・・(1)

よってPP’間の平均速度は、

$\dfrac{ f(t_1+δt)-f(t_1) }{ δt }=\dfrac{2at_1δt+aδt^2}{δt}=2at_1+aδt$  ・・・(2)

ここで$δt$をゼロに近づければ、(2)式は$2at_1$となる。

 これが、P点における瞬間速度であり、曲線$y=at_2$の$t=t_1$における微分係数である。そして、独立変数(上記では$t$)の微小増加$dt$を狭義の意味で独立変数の微分といい、それに対する従属変数の微小変化$dy$を狭義の意味で従属変数の微分という。そして$\dfrac{δy}{δt}$で$δt$がゼロに近づくときの値(微分係数)を $\dfrac{dy}{dt}=f'(t)$ で表し、それを求めることを微分演算という。このとき従属変数の微分$dy$は、

$dy=f'(t)dt$ ・・・(3)

と表される。 $y=f(t)=at^2$の場合であれば、

$dy= 2atdt$ ・・・(4)

である。

 なお、ここでは時間的変化を扱ったため、独立変数を$t$としたが、一般には独立変数を$x$とし、従属変数を$y$とすることが多い。

主な関数の微分

 関数の微分をいくつか以下に記載した。上記と同様にして求めることができるが本記事では結果だけを記載する。

$\dfrac{d(c)}{dx}=0$   ($c$は定数)

$\dfrac{d(ax^n)}{dx}=anx^m$  ($m=n-1$)

$\dfrac{d(sinx)}{dx}=cosx$

$\dfrac{d(cosx)}{dx}=-sinx$

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