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梁の曲げ変形における中立軸とは何か
図1は先端に鉛直下方の集中荷重を受ける片持ち梁を示した図である。この場合、梁の上側(変形し凸状になる側)は伸ばされて元の長さより長くなり、梁の下側(変形し凹状になる側 )は圧縮され元の長さより短くなる。そして、その中間の何れかの位置で、曲げ変形後ももとの長さと変わらない面がある。これは梁の長手方向に沿った面であるが、これを中立軸という。

図で中立軸より上側では断面に引張り応力が作用し、中立軸より下側では断面に圧縮応力が作用しており、その断面に作用する力の総和が$0$になっている。
断面の幅(紙面に垂直な方向の長さ)が矩形などのように$y$方向に変化しない場合には、中立軸は梁の高さ($y$)方向の中心にある。また、断面が円やひし形など、軸対称図形である場合も、中立軸は梁の高さ($y$)方向の中心にあり、断面二次モーメントを定義式から求めるのは容易である。
三角形断面梁の中立軸
図2は、底面の幅が$b$、高さが$h$である三角形の梁の断面を示している。このような断面の梁の場合、中立軸は高さの中心ではなく、中立軸の定義式から求めなければならない。
中立軸の定義敷は$\int_S ydS=0$である。いま、図2で三角形の頂点を$y=0$とし、中立軸が$y=a$の位置にあると仮定すれば、中立軸を求める方程式は、
$0=\int_0^h (y-a)dS=\dfrac{b}{h}\int_0^h y(y-a)dy=\dfrac{b}{h}\int_0^h (y^2-ay)dy=\dfrac{b}{h}(\dfrac{h^3}{3}-\dfrac{ah^2}{2})$
これを整理すれば、
$0=bh(\dfrac{h}{3}-\dfrac{a}{2})$ ・・・(1)
これより、中立軸の位置$a$が
$a=\dfrac{2}{3}h$ ・・・(2)
ことがわかる。

三角形断面の二次モーメント
前項で三角形断面梁の中立軸の位置がわかったので、 三角形断面梁の断面二次モーメントを求めてみよう。中立軸は三角形の頂点から $\dfrac{2}{3}h$ の位置にあるから、断面二次モーメントを求める式は、
$I_z=\int_0^h \dfrac{b}{h}ydy(y-\dfrac{2}{3}h)^2=\dfrac{b}{h}\int_0^h y(y^2-\dfrac{4}{3}hy+\dfrac{4}{9}h^2)$
積分記号内の式を展開して、
$I_z=\dfrac{b}{h}\int_0^h (y^3-\dfrac{4}{3}hy^2+\dfrac{4}{9}h^2y)=\dfrac{b}{h}(\dfrac{h^4}{4}-\dfrac{4}{9}h^4+\dfrac{4}{18}h^4)$
これを整理して三角形断面梁の中立軸回りの断面二次モーメント
$I_z=\dfrac{bh^3}{36}$ ・・・(3)
が求まる。
平行軸の定理
次に断面二次モーメントに関する定理を導くために、図2の三角形断面で$y=h$軸回りの断面二次モーメント$I_z’$を求めてみよう。
$I_z’=\int_0^h (h-y)^2\dfrac{by}{h}dy=\dfrac{b}{h}\int_0^h y(h-y)^2dy=\dfrac{b}{h}\int_0^h y(h^2-2hy+y^2)dy$
積分記号内の式を展開して、
$I_z’=\dfrac{b}{h}\int_0^h (h^2y-2hy^2+y^3)dy=\dfrac{b}{h}(\dfrac{h^4}{2}-\dfrac{2}{3}h^4+\dfrac{h^4}{4})$
これを整理して $y=h$軸回りの断面二次モーメント$I_z’$ は、
$I_z’=\dfrac{bh^3}{12}$ ・・・(4)
三角形断面の面積$S$は、$S=\dfrac{1}{2}bh$、中立軸と$y=h$軸との距離$d$は、$d=\dfrac{h}{3}$であるから、(3)式の中立軸回りの断面二次モーメント$I_z$と(4)式の$y=h$軸回りの断面二次モーメント$I_z’$の間には。
$I_z’=I_z+Ad^2$ ・・・(5)
なる関係が成り立つ。すなわち、中立軸に平行で中立軸との距離が$d$離れている軸回りの断面二次モーメントは、中立軸回りの断面二次モーメントに断面の面積と軸間距離の2乗の積を加えた値に等しくなる。これが平行軸の定理といわれるものである。
平行軸の定理は、中立軸の位置がわかっている場合、計算しやすい軸回りの断面二次モーメントを求め、その値から断面面積と軸間距離の2乗の積の値を引けば簡単に求めることが出来るという便利なものである。
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