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残された遺族が争わず仲良く暮らせるように
人が死亡すると、被相続人(死亡した人)の配偶者と特定の血族に被相続人の財産を相続する権利が生じる。そして、僅かな遺産を巡って縁者間で争いが生じ、仲違いしたりする例は世間に多く見受けられる。残された遺族が争わず仲良く暮らせるよう、先立つ人は生前贈与や遺言作成をしておくことが望ましい。
相続に関する争いの実例
私の知人の話であるが、知人は末っ子の長男で、上に三人の姉があった。父親は知人の母(父親の配偶者)と四人の子供の前で、「この家は親の面倒を見る末っ子の長男に譲る」ということを日常的に話していた。しかし、長女と次女が結婚した後、父親が亡くなると、次女は母親や三女と住んでいた長男に家を売って相続分を渡せと迫ってきたとのことである。長女は、父親の言いつけをまもり、次女を説得して権利放棄をしたのであるが、次女は父親の遺産である家を末っ子の長男が継いだ後も、母親と一緒に暮らす長男に対し、何度も自分の夫(相続に意見を差し挟める立場でない)とともに金銭を要求してきたとのことである。この場合、一度権利放棄したのであるから、法的に請求権は無くなっているから問題とはならないし、次女の夫は相続に関して意見を差し挟める立場でないから、法的には全く問題は無いわけである。しかし、次女はその後末っ子の長男を敵視し、家の付き合いは途絶えたとのことであった。
遺産相続と遺言
遺産相続に関しては、配偶者、子、親の相続権に関しては、その遺留分は遺言を持ってしても無くすことは出来ないが、兄弟姉妹の相続権は遺留分を有しないので遺言をもって無くすことができることは遺言作成において考慮すべき重要な点である。また、遺言は書面でしなければならず、且つ法律(民法)で決められた書式でする必要があることも押さえておく必要がある。
以下に相続の概要と遺言について簡単に記すことにする。
被相続人と相続人
被相続人とは死亡した人のこと。自分の財産を相続される立場となることから被相続人と呼ばれる。
相続人とは、被相続人が死亡したときその財産を相続する立場にある人をいい、法律によって定められている。
相続人の第一順位は被相続人の実子または養子、第二順位が被相続人の実親または養親、第三順位が被相続人の兄弟姉妹であり、上順位の相続人がいる場合、下順位の相続人に相続権は生じない。
相続人と相続分
以下、本項では被相続人の全財産を1200万円とする。
被相続人の配偶者
配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人である。
被相続人に子がいる場合
配偶者の相続分が$\dfrac{1}{2}$、被相続人の子の相続分が$\dfrac{1}{2}$である。
したがって、被相続人に子Aと子Bがいる場合、配偶者が600万円、子Aと子はそれぞれ300万円を相続する。
(補足)
子は、実子であるか養子であるか、嫡出子であるか非嫡出子であるか、戸籍が同一であるか否かは問わない。
また、胎児は既に生まれたものとみなされるが、生きて生まれてはじめて相続開始の時まで遡って相続権を持つ。したがって、死んで生まれた場合は相続権はない。
(子の代襲相続)
・被相続人の子が、相続開始以前に死亡しているとき、相続欠格事由(民法891条)に該当または排除(民法892条)によって相続権が無い場合は、その者の子(被相続人の孫)が相続権を代襲して相続人となる(代襲相続人)。ただし、養子の連れ子は代襲相続人になれない。
・上記代襲相続人が、 相続開始以前に死亡しているとき、相続欠格事由に該当または排除によって相続権が無い場合は、その代襲相続人の子が代襲相続権を得る。
被相続人に子がおらず直系尊属がいる場合
配偶者の相続分が$\dfrac{2}{3}$、直系尊属の相続分が$\dfrac{1}{3}$である。
したがって、被相続人に父親Aと母親Bがいる場合、配偶者が800万円、父親Aと母親Bはそれぞれ200万円を相続する。
(補足)
直系尊属は実親、養親を問わない。直系尊属に姻族は含まない。
被相続人に子も直系尊属もおらず兄弟姉妹がいる場合
配偶者の相続分が$\dfrac{3}{4}$、兄弟姉妹の相続分が$\dfrac{1}{4}$である。
したがって、被相続人に兄弟ABCがいる場合、配偶者が900万円、兄弟ABCがそれぞれ100万円を相続する。
(兄弟姉妹の代襲相続)
兄弟姉妹にも代襲相続が認められているが、代襲原因は「相続開始前の死亡」と「欠格」の場合のみである。
兄弟姉妹の場合、再代襲は認められていない。代襲が認められているのは被相続人の甥、姪までである。
相続の欠格と排除
相続の欠格(法的に相続権を喪失する場合)
以下の①から⑤(相続の欠格事由)に該当する者は被相続人の財産を相続することができない。これを相続の欠格という。
①故意に被相続人または相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡させ、または死亡させようとして、刑に処せられた者
②被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、またはこれを告発しなかった者
③詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者
④詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者
⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者
排除(被相続人、遺言執行者の家庭裁判所への請求要)
相続人が被相続人を虐待したり、侮辱をしたり、著しい非行をしたときは、被相続人はその者を相続人から排除するよう家庭裁判所に請求することができる。
排除の対象は遺留分を有する相続人であり、被相続人の兄弟姉妹は含まない。
排除は生前排除でも遺言でもすることができ、申立者は生前排除の場合被相続人、遺言排除の場合は遺言執行者である。
遺留分と遺留分を有する相続人
被相続人の意思に拘わらず(遺言で相続させないとしても)、相続人側が請求できる法的な遺産相続分を遺留分という。
・直系尊属のみが相続人の場合、 通常の遺産相続分の$\dfrac{1}{3}$となる。
・上記以外の場合、通常の遺産相続分の$\dfrac{1}{2}$となる。
遺留分を有するのは兄弟姉妹以外の相続人、すなわち第一順位および第二順位の相続人である。第三順位の相続人である被相続人の兄弟姉妹には遺留分は無い。
遺言の効果
被相続人が第一順位および(または)第二順位の相続人に財産を継がせたくない場合、遺言書にその旨を明記するとともに当該相続人の廃除をすることによって財産を継がせないことができる。当該相続人が相続欠格または排除の対象とならないときは、遺言で明記しても当該相続人は遺留分を請求することができる。
第三順位の相続人は遺留分を有しないので、被相続人が財産を相続しない旨を遺言書に明記すれば遺産相続することはできない。
遺言の方式による種類
遺言の方式には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があるが、以下、自筆証書遺言と公正証書遺言について簡単に説明する。
自筆証書遺言
書式
自筆証書遺言では、遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自書し、捺印をすることが必要である。ワープロやタイプライターで書かれたものやテープレコーダーで録音されたものも無効である。
裁判所の検認
自筆証書遺言では、相続が開始したとき、遺言書の保管者または相続人が裁判所に家庭遺言書を提出して検認を受けなければならない。
公正証書遺言
書式と作成手続き
公証人が遺言者の意図する内容を遺言書として文章で作成し、二人の立会人のもと遺言者と公証人で遺言内容が正しいことを確認し、遺言者、立会人が署名・捺印した後、公証人が署名、捺印して公正証書遺言が完成する。
公正証書遺言作成においては、公証役場に出向き公証人に希望する遺言内容を説明し、一定期間後再度公証役場に出向き希望する内容の遺言に仕上がっているかを確認し、立会人とともに署名捺印すれば出来上がるため、公証役場には二度出かければよい。
費用
作成費用は相続遺産の額にもよるが、一般の家庭では、遺言作成費用、二名の立会人への礼金を合わせても10万円以下ほどの金額で済むものである。
裁判所の検認
公正証書遺言は、家庭裁判所の検認は不要である。
公正証書遺言は、正本を公証人役場に保管されるため安心である。
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