不動産の購入は、多くの人にとって、一生に一度か二度と言った一大イベントである。しかし、ある年令に達し、不動産(土地・家屋)を購入する場合、誰もが不動産購入の初心者であり、その物件(買おうとしている土地・家屋)が良いものかどうかを正しく判断する知識を持っていないのが普通である。
しかし、購入してから悪いものであることに気づいたとしても、簡単に買い換えのできる安い物ではなく、事すでに遅しである。この一大イベントである不動産購入について、失敗することのないように、数度にわたる不動産売買の実体験と、長い人生経験の中で学んだことを合わせて、注意点を記載する。
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購入地域の選定
最初に確認が必要なのは、購入しようとしている土地が、巨視的(広域地形的)にどのような地域にあるかという点である。例えば海岸からの距離、海抜、埋立地かそうでないかといったような点である。
中京圏を例に取れば、名古屋市西部から木曽川下流に至る地域は、海抜0メートル地域であり、木曽川や庄内川、新川等の堤防が決壊したり、東日本大震災のような津波が伊勢湾を北上してくれば浸水被害の出る地域である。また、熱田神宮から庄内川河口までの地域は、江戸時代に埋め立てられた干拓地で、大地震が起これば液状化の心配のある地域である。
名古屋東部のもともと台地であった場所でも、川の周辺は豪雨の折、川が氾濫(内水氾濫)する危険がある。過去に、東海豪雨の折、天白川周辺で内水氾濫が起き、浸水被害が起こっている。
上記は名古屋市と名古屋周辺を例としてあげたが、日本全国どの地域においても、このような地形や地域の歴史(過去の埋立地その他)に起因する問題を抱えているものである。
幸い、最近では、どこの自治体でもハザードマップを作成し、その地域内の土地のどこが危険であるかがわかるようにしている。購入する土地を選定するにあたっては、最初に購入しようとする土地が存在する自治体の窓口に出向き、ハザードマップを入手することである。
ハザードマップで確認
多くの自治体が出しているハザードマップには、津波で被害を受ける地域、巨大地震発生時の推定最大震度と液状化の発生する地域、大雨(豪雨)被害(内水氾濫)の危険がある地域などが表記されている。これらの危険性の無い場所で土地を探すことが望ましい。
しかし、上記すべての問題をクリアする場所を選べない場合もある、例えば、海抜が低い川の下流周辺の地域に住む必要がある場合、浸水や津波発生時に避難できる階数の鉄筋コンクリート作りしたり、高層マンションを購入するなどする方法もある。
地名・旧地名を確認
地名には、過去その土地がどのようなところであったかを示しているものが多い。例えば「大池」などの地名は、池を埋め立てた土地であることを示しており、名古屋市内の「鳴海」は、かってその地域が海岸に近かったことを示している。
平成の大合併で地名が変わり、このようなことがわかりにくくなったが、役所に出向いたりすれば旧地名を確認することが出来、土地選定時の参考にすることが出来る。
造成地で確認すること
安全な地域を選定したら、次は実際に購入する土地の選定である。造成地においては、切土の土地か盛土の土地かの確認、前面道路と宅地との段差の有無、家の向き、風通しの良さ等、土地の形質そのものの確認の他、交通の便、生活の便など、広範な点から確認が必要となる。
土地の形質そのものの確認
切土・盛土
切土とは、造成時にもともと斜面で会ったところを削って平にした部分(土地)、盛土とはもともと斜面で会ったところに土を盛って平にした部分(土地)のことである。
宅地開発時には、山を造成して宅地開発をすることが多く、同じ団地内に、切土の土地と盛り土の土地が混在している。
地震が起こった場合、同一の地震規模(マグニチュード)において、切土の土地の方が盛土の土地に比べ、地震の揺れ(震度)は小さく、同一の建物ならば被害も少なくなる。
これは、一般的に削り出した土地の方が土を盛り上げた土地よりも地盤がかたいからである。従って、盛土の土地しか入手できない場合であっても、その土地の地質調査を行って、安全性(地盤のかたさ)を確認することが望ましい。
前面道路の向きと土地の形
家は、玄関が東向き、居間に太陽が差し込むのが望ましく、西日はあまり良くないとされている。また、湿気の多い日本では、風通しが悪いと壁(家具や冷蔵庫の裏側の壁)にカビが発生しやすく、病気(発がん性のカビもある)の原因にもなる。
従って、できれば隣家の建物との距離がとれ、土地の東側あるいは南側が道路に面しているのが望ましい。ただし、東側あるいは南側に高層マンションや山などがあれば話は別である。
また、土地の形としては南北に長いほうが南側に庭を広く取り、部屋に太陽光が差し込むように出来、冬も温かい家となるし、洗濯物を干す上でも便利である。
前面道路と土地の高低差
前面道路と土地の高低差がある場合(土地が前面道路より高い場合)、眺めが良い等の利点もあるが、駐車場を作る場合、その市町村で指定された擁壁工事が必要となり、高額の費用が発生する。
例えば、高低差が1m程度ある土地で、普通車2台入る車庫を作る場合、500万~1000万円の費用が発生する。眺めや他の理由でそのような土地を購入する場合、後に大きな費用が発生することを見込んでおく必要がある。
周辺環境の確認
現在および将来おける環境の確認
商店の種類と営業時間、学校と学区、病院等の診療科と診療時間、救急病院の有無、公共施設の整備状況と整備計画などを購入前に確認することが大切である。
現在および将来における交通その他の利便
主要駅までの距離・所要時間、最寄駅や停車場までの距離・所要時間、電車やバスの運行本数を確認しておくこと。新設路線計画等がある場合、それが運行主体が公表したものかどうかまで(信頼性が相当程度あるものであることを)確認しておく必要がある。
旧家屋の場合確認すること
建築年
中古住宅を購入する場合、昭和57年1月1日以降に新築した住宅を購入すると、購入時の税制面での優遇(課税標準で1200万円の控除)がある。
使用材料
中古住宅の材料にアスベストが使用されていると、立て直しの時、あるいは売るときに300万円ほどの余分な費用が発生する。アスベストは、昭和50年代の建物の瓦(カラーベスト)や、屋根裏の断熱材として使われることがあったので、中古住宅購入時に使用の有無を確認することが必要である。
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