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令和2年7月の九州豪雨|頻発する豪雨災害への抜本的対策はどのようなものか?

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令和2年7月の九州豪雨|頻発する豪雨災害への抜本的対策はどのようなものか?

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九州各地で豪雨災害

 令和2年7月3日以降、熊本県を中心に九州や中部地方の岐阜県などで集中豪雨があった。

熊本豪雨

 九州では、7月20日時点で、熊本県南部、川辺川・球磨川流域の人吉市や球磨村を中心に、死者数は70人以上の災害が発生し、岐阜県では飛騨川が氾濫し、国道41号線で百メートル以上にわたって道路が飛騨川に崩落し、JR高山線も不通となった。

日本の気候の変化

 21世紀に入ってから、何十年に一度(気象庁や気象関係者の表現)という豪雨が、 毎年のように日本の至るところで 発生し、河川の氾濫や堤防の決壊による浸水被害、土砂崩れによる民家の崩壊、道路や鉄道の寸断などの多くの災害を引き起こしている。

 20世紀の地球の気候は比較的穏やかであり、日本国内の雨量についていえば、長崎、室戸岬や尾鷲など、地形的に雨量の多いいくつかの地域を除き、時間あたりの最大雨量は30mm程度までしか観測されることがなかった。

何十年に一度の豪雨が毎年のように発生

 しかし、21世紀に入ると、2000年9月の東海豪雨の頃から、それまで観測されることがなかった、1時間あたりの雨量が100mm以上という豪雨が 日本の各地で発生するようになってきた。

西日本豪雨

 気象庁や、気象関係者が何十年に一度という表現をする場合のベースデータは、10年ごとに更新される過去30年間の平均である。平年値は10年ごとに、その直前の30年間の平均値をとって更新されており、2020年における気象データの平均値とは、降水量も含め、1980年から2010年までの平均値である。

 このベースデータは、2021年になると1990年から2020年までの平均値に更新されるわけである。

ベースデータとの比較による予報表現と現実が乖離

 降水量が多くなった原因は、地球温暖化による海水温度の上昇であり、大気中に含まれる水蒸気量が増加したことによるものである。

 地球温暖化により、海水温は、経済活動の膨張による大気中や海水中への排熱の増加、$CO_2$や水蒸気など大気中の温室効果ガスの増加により、年々上昇し続けている。

 にも拘らず、気象予報のベースデータが、最大時間雨量が30mm程度であった1980年から2000年までの20年間のデータと、最大時間雨量100mmが少ない頻度で観測されはじめた2001年から2010年までの10年間のデータを合わせた30年間のデータを基にしているため、毎年のように起こるようになった甚大な被害をもたらす豪雨を、何十年に一度の豪雨と表現している。

 それゆえ、現実と気象予報の表現の差に違和感を覚える人が多いものと思われる。

豪雨災害への対処法

河川の流量能力の増加

 さて、毎年のように起こる豪雨災害にどのように対処するかであるが、実現に要する時間と費用、住環境や自然環境問題を除外して考えれば、技術的には簡単なことである。解決策を一言で言えば、最大雨量が20世紀の3倍になったのであるから、まず最初に行うべきことは、

  • 陸地に降った雨を海まで流す下水や河川の搬送可能流量を現在の3倍にすることである。

崩落・崩壊危険箇所への対処

 また、崖などの自然地形や河川にかかる橋脚は、1時間あたり最大雨量30mm程度の状態で安定して維持されてきたものであり、1時間あたり100mmの雨量では崩落したり、崩壊したりする危険性がある。従って、

  • それらを100mmの雨量で崩落したり、崩壊したりすることのないようにすることが必要である。

 しかし、上記した対策を要する箇所は全国至るところに存在するため、実施するとなると、計画的に行っても、数十年、あるいは100年ほどの時間を要するものである。

具体策の事例

 上記の対策を、河川に関してだけ、もう少し具体的に記せば、搬送可能流量を3倍にするためには、

  • 堤防を後方に移動し、川幅を3倍にする
  • 堤防の高さを、3倍の水量を搬送できる高さにまで高くする

のいずれかの方法が必要である。
搬送可能流量はそのままで、流量調節をする方法としては、

  • 河川の上流から下流までの至るところで、巨大な貯水池や貯水槽を作る
  • 河川の上流から下流までの必要な箇所にダムを作る

方法がある。

治水は為政者の為すべき重大事業

 治水はいつの時代も為政者の為すべき重大事業であり、我が国の歴史を見ても多くの為政者が治水事業に取り組んできた。

 雨量が20世紀の3倍になった今の日本においては、上記対策を、住民に説明をし、住民と話し合いながら、計画的に進めていくことが為政者の責任である。

 上記対策を科学的に比較検討すれば、かって自然を破壊し、生態系を壊すとして批判の的になったダム建設が、生態系への影響も最も少なく、周辺住民の犠牲も少ない。また、建設費用や期間も少なく現実的である。

 我が国には、近視眼的な視点から無責任に反対する政党や政治家、自国民の利益を考えず、他国の利益の代弁をしているような政治家やマスコミが存在する。

 そして、上記いずれの解決策も、一部自然環境を壊し、住民に犠牲を強いる部分があることを考えれば、反対する理由はいくらでも挙げられる。

 しかし、上記いずれかの対策を行わねば、毎年甚大な災害が発生し、国土は荒廃し、国民は疲弊し、次第に国力が低下していくことは明らかである。

 反対のための反対を恐れず、政治生命をかけ、国家百年の計のもと、国民の利益、将来の日本に資する抜本的対策をする政治家の出現を望みたいものである。

過去の為政者に学べ

 名古屋市内にある『久屋大通』と『若宮大通』の百メートル道路(道幅百メートルの道路)は、戦災からの復興計画の一環として、火災発生時の延焼防止・市民の避難場所確保・車社会への適応のために計画された。

名古屋久屋大通

 当時、「飛行場でも作るつもりか」「そんな広い道路は要らない」といった批判があったが、1964年に完成し、今では、名古屋の主要な一画を構成し、多くの名古屋市民が憩う場所の一つとなっている。

 そして、一旦大災害(大火災や大地震など)が起これば、市民の避難場所として利用できるものである。

 また、岐阜県八百津町から愛知県の南知多に至る愛知用水(全水路長1,000km以上)は、河川の無い知多半島の先端まで、木曽川の水を生活用水・農業用水として利用できるよう造られたものである。

 建設当時反対する者もあり、完成するまでに56名の殉職者を出したが、完成後は知多半島で暮らす多くの人に命の水を届け、今日に至っている。

関連記事(自然環境の変化と21世紀の家のあり方):https://marisuke.com/archives/1728

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