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土石流災害発生
2021年7月3日午前10時半頃、静岡県熱海市伊豆山で発生した土石流は、標高390mの盛土があった起点から海岸までの2kmを、多くの家屋をなぎ倒し、人や車を呑み込みながら、一気に海まで流れ落ちた。

土石流の時速は30km以上と推定され、遭遇すれば、人や車でとても逃げられるものではないことが映像からも見て取れる。その破壊力は半端でなく、一旦始まれば人の力で止められるものではなく、住民が体験した恐怖は筆舌に尽くしがたいものと思われる。
被害状況
今回の土石流による被害状況は、被害家屋およそ130棟、7月14日時点における死者は11人、安否不明者は17人となっている。
現場では、連日のように雨が降り、14日朝も茶色い水が捜索現場の真横の谷筋を流れるという厳しい状況の中で、自衛隊や他の地域の消防隊などが救助・復旧作業にあたっている。
同地での降雨量
同地域での降雨量は、土石流災害発生の二日前の、7月1日未明から7月4日午前0時半までの72時間降水量が411.5mmであった。同地域の7月1ヶ月間の平均降水量が242.5mmであることを考えると、わずか3日間で7月平均総降水量の1.7倍の雨が降ったことになる。
土石流災害の最上部
災害から時間が経つにつれわかって来たことは、今回の土石流災害が、土石流最上部の土地の前所有者が行った不法な盛土が原因していると思われるとのことである。現在、静岡県副知事が原因究明に注力しているが、現在までにマスコミ等で公表されている内容は以下の通りである。

盛土( 土石流最上部 )の土地所有者
前所有者(A社)時の経緯
2006年9月 A社が購入
2007年3月 静岡県条例に基づく盛土の計画届書を提出
届書記載の土地改変面積 0.9haに対し、実際は1ha超えであり、静岡県から行政指導を受ける。
2010年8月 盛土に産業廃棄物が混入していることが判明し、県と市から撤去、土砂搬入中止の指導を受けるも、A社応ぜず。
(A社所有時の2010年時点における盛土の公開写真から不法投棄は明らか)
2011年2月 県や市の指導に何ら対応することもなく、現所有者に売却
現所有者
2011年2月 、当該土地を購入後、前所有者の行った不法な盛土を、災害発生までの10年間何もしないまま放置
土石流災害発生の責任は?
土地所有者の責任
民法上、現所有者は無過失責任を負うとされるとともに、現所有者は原因となる工事をした業者への損害賠償請求が出来るとしている。従って、先ず責任を問われるのは、危険な状態で購入したまま、何ら改善処置をすることなく11年間危険な状態を放置した現所有者ということになる。盛土としての説明を受けなかったと代理弁護士が述べているが、目視でわかる不法投棄を、現地を確認することなく購入し、その後11年間何ら対処していないとすれば、前所有者への損害賠償の可否は別として、自らも責任を免れないのは明白であろう。

民法717条
第1項
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に障害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
(補) 所有者の責任は無過失責任であり、免責規定はない。
(注)占有者とは、通常はその土地に住んでいる人を指す。第3項
前項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することが出来る。
行政側の対応の問題
土地所有者の杜撰な工事や管理に起因する今回の土石流災害に対し、静岡県と熱海市は被害の原因となった土地の工事や管理に関する証拠収集にかかっているとのことである。ただ、不法投棄をしながら行政指導に従わない、前所有者や、10年以上危険な状態を放置しておいた現所有者に対し、行政側としての適切な対処、例えば「行政代執行」や「執行罰」などの対処はすべきであったであろうと思われる。この点の対応の甘さは追求されても仕方のないところであろう。
代執行
代執行とは、他人に代わってなすことができる代替的作為義務について、これを履行しない義務者に代わって行政庁が行い、その費用を義務者から徴収する制度のこと。
執行罰
執行罰とは、義務者に義務を履行させるため、あらかじめ義務不履行の場合に過料を科すことを予告するとともに、義務不履行の場合にはその都度過料を徴収することによって、義務の履行を促す間接強制の方法のこと。
しかし、同時にきちんと原因究明をし、不法投棄をした前所有者、危険な状態を10年以上にわたって放置していた現所有者名と、それぞれが行った事実を国民の前に明確にする必要があると思われる。
宅地建物業者への罰則
原因追求の結果掴んだ事実から、不法行為が明らかになった場合、所有者が宅地建物取引業者であるならば、民法上の責任と損害賠償だけでなく、宅地建物業者の不法行為に対する宅建業法上の罰則、すなわち業者資格の剥奪や最高1億円の罰金を併せて課すべきである。住民が受けた被害の甚大さ、当地だけでなく国や他方の地域に多大な負担を強いたことからして、厳罰に処されるのは当然のことである。
悪質業者には厳しい罰則を
民法にしろ、宅建業法にしろ、法の目的は罰則を課すことだけでなく、今回のような事故を未然に防止することにある。 多くの住民を犠牲にするにとどまらず、国や地方に多大の損失を与えた今回の業者に対しては、きちんと厳罰を課し、自らの不法行為の精算をさせるとともに、今後このような不心得者が出ることを抑止するようにすべきである。
同様の災害の回避のために
国、地方自治体の対応
21世紀に入った頃から降雨量はそれ以前の3倍(1時間雨量100mm)程度になった。最近では毎年のように全国いたる所で豪雨があり、河川の氾濫や土砂崩れなどが起こっている。

日本の多くの場所は、20世紀の1時間最大雨量30mm程度を想定して、堤防や橋梁などが作られているため、今や日本国内どこにおいても豪雨災害(堤防の決壊ががけ崩れなど)が発生しかねない。国や自治体は、危険な箇所をリストアップし、危険度のランク付けを行い、危険度の高い方から治水工事に取り掛かるべきである。
国民の意識変革
国民においても、自然環境が変化した(厳しくなった)ことを心に刻み、機会があればより安全な場所に居を移すのが望ましいのであるが、それができない場合は、早めの避難を徹底すべきである。命は一つしかないものであり、逃げ遅れて死んでしまっては元も子もない。避難が空振りに終わっても、何もなくて良かったと思えばよいことである。
住んでいる土地の危険度を知る
自らの住んでいる土地の危険度を知る意味で、以下の2つのツールは非常に役立つものであると思われます。
国土交通省:重ねるハザードマップ
https://disaportal.gsi.go.jp/maps/?ll=35.335293,138.735352&z=5&base=pale&vs=c1j0l0u0
- 表示されている日本地図で自分の住んでいる所を、中央の+マークに移動し拡大します。
- 画面左上にある、確認したい災害種別を選べば、危険な場所が、上で選んだ地域に重ねて表示されます。
- 選べる災害は、洪水、土砂災害、高潮、津波、道路防災情報、地形分類と6種類の危険箇所を単独に、あるいは重ねて表示することができます。。
気象庁ホームページ
https://www.jma.go.jp/jma/index.html
・画面上の「キキクル」をクリックすれば、危険度分布が表示されます。
(注)上記ツールは非常に有益であるが、上記ツールで危険でないと表示される所でも、短時間降水量が100mmを超えるときなどは、一時的に内水氾濫が起こることもありうるので、日頃から自らの住んでいる土地の周囲の特徴は把握するようにするのが良いと思います。
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