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フェーン現象と断熱減率、相変化に伴う潜熱

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フェーン現象と断熱減率、相変化に伴う潜熱

 フェーン現象とは、湿った空気塊が雨を降らせながら山の斜面に沿って上昇し、乾いた空気塊となって山の反対側の斜面を風上側と同じ高度まで下ったとき、風上側よりも気温が高くなる現象をいう。この現象が起きる原因は飽和空気塊が上昇するとき雨滴あるいは氷晶が空気塊中に形成され潜熱が放出されるため、断熱減率(高度変化に伴う温度変化の率)が下がることが原因である。
 以下、気象学のテキストに沿って少し専門的にフェーン現象を説明する。
 

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断熱減率

  空気塊が断熱的に上昇したとき、 温度が高度とともに減少する割合を断熱減率(adiabatic lapse rate)という。 断熱減率は空気塊が飽和状態にない場合と飽和状態にある場合で異なり、それぞれを乾燥断熱減率 (dry adiabatic lapse rate) 、湿潤断熱減率 (moist adiabatic lapse rate) と呼んでいる。

乾燥断熱減率

 空気塊が、その中に含む水蒸気を凝結させることなく、断熱的に上昇した場合、 温度が高度とともに減少する割合を乾燥断熱減率という。空気塊が更に上昇を続けることによって、含まれる水蒸気の凝結が生じた後の空気塊の温度の下がり方は、次の項に示す湿潤断熱減率となる。

 乾燥断熱減率は0.00976K(度ケルビン)/m 。すなわち、1km上昇するごとに約10K(10度ケルビン)下がる。逆に1km下降すれば 約10K(10度ケルビン) 温度が上がる。

湿潤断熱減率

 水蒸気で飽和した空気が断熱上昇するとき、温度が高度とともに減少する割合を湿潤断熱減率という。

 水蒸気で飽和している空気塊を断熱的に上昇させた場合、断熱膨張のため空気塊の温度は下がるが、空気塊の温度が下がることによって飽和水蒸気密度も下がり、空気塊中に溶けられなくなった余分な水蒸気は凝結し、潜熱を放出する。この潜熱が空気塊を温めるため、上昇運動に伴う空気塊の温度の下がり方は不飽和空気塊の温度の下がり方(乾燥断熱減率)よりも小さくなる。

 湿潤断熱減率は、空気塊のはじめの温度や圧力によって異なる。温度が高いほど飽和空気が含み得る水蒸気量が多いから、凝結する水蒸気量も多く潜熱を多く放出するため、温度の下がり方は小さくなる。

 大雑把に言えば、大気圏下層の暖かい空気塊が上昇した場合は1km上昇するごとに約4K(4度ケルビン)下がる。対流圏中層で空気塊が上昇した場合は 1km上昇するごとに は6~7 K( 6~7 度ケルビン)下がる。 対流圏上層で空気塊が上昇した場合は空気塊の水蒸気量が少ないため乾燥断熱減率とほとんど変わらない温度降下をすることが知られている。

乾燥断熱減率と湿潤断熱減率

 上図は横軸に温度、縦軸に高度をとったときの乾燥断熱減率(T-T’)湿潤断熱減率(Tw-Tw’)を示したものである。ある高度で温度Tの空気塊が上昇するとき、その温度と高度の関係は、空気塊が飽和状態になるまで乾燥断熱減率T-T’で示すように変化する。そして空気塊の蒸気密度が飽和蒸気密度にTcでなったとすると、その後空気塊の 温度と高度の関係は、 湿潤断熱減率Tw-Tw’で示すように変化する。
 仮に空気塊が最初から飽和状態にあれば、空気塊の温度と高度の関係は、Tを通る湿潤断熱減率T-Tw2で示すように変化する。

相変化に伴う潜熱

融解熱(氷が融解し水へと相変化するときの潜熱)

 氷が水へと相変化(融解)するときに必要な熱量、または水が氷になる(氷結)ときに放出する熱量を融解熱という。1kgあたりの融解熱は次式で表される。
 すなわち、1kgの氷が水になるには80kcalの熱量が必要であり、1kgの水が氷になるときは80kcalの熱量を周囲に放出する。

 融解熱=3.34×105J/kg=80kcal /kg

蒸発熱(水が蒸発し水蒸気へと相変化するときの潜熱)

 水が水蒸気へと相変化(蒸発)するときに必要な熱量、または水蒸気が凝結し水になるときに放出する熱量を蒸発熱という。1kgあたりの蒸発熱は次式で表される。
  すなわち、1kgの水が水蒸気になるには597kcalの熱量が必要であり、1kgの水蒸気が水になるときは597kcalの熱量を周囲に放出する。

 蒸発熱=2.50×106J/kg=597kcal /kg

昇華熱(氷が昇華し水蒸気へと相変化するときの潜熱)

 氷が直接水蒸気へと相変化(昇華)するときに必要な熱量、または水蒸気が氷へと相変化するとき放出する熱量を昇華熱という。1kgあたりの昇華熱は次式で表される。
  すなわち、1kgの氷が水蒸気になるには676kcalの熱量が必要であり、1kgの水蒸気が氷になるときは676kcalの熱量を周囲に放出する。

 昇華熱=2.83×106J/kg =676 kcal /kg

フェーン現象

 フェーン現象とは、湿った空気塊が山にぶつかり上昇するとき、高度上昇に伴う気温の下降で飽和水蒸気密度が下がり、水蒸気を凝結させ(雲の発生)雨を降らせ乾いた空気塊として山を下るため、山の反対側(風下側)の気温が上がることである。

 下図は横軸を温度、縦軸を高度とし、乾燥断熱減率と湿潤断熱減率を記したものである。ある高度で温度Tの空気塊が上昇し、温度Tcとなった高度で飽和蒸気密度になったとする。この場合、空気塊の温度と高度の関係は、TからTcに至るまでは乾燥断熱減率に従って変化する。そしてTcに達した後、空気塊は水蒸気を凝結させながら上昇するため、空気塊の温度と高度の関係はTcからTw’に向かって湿潤断熱減率に従って変化する。
 仮に、空気塊が山の頂上に達したとき、温度Tc’となり結露した水滴をすべて雨として降らせ、山を風下側へ下るとした場合、空気塊の温度と高度の関係はTc’からT2へ向かって乾燥断熱減率に従って変化する。

フェーン現象の説明図

 この場合、空気塊が風上側と同じ高度まで下降した場合、その空気塊の温度はT2となる。すなわち、風上側より( T2-T )だけ温度が上昇したことになる。
これがフェーン現象を説明する熱力学モデルと言われているものである。

参考文献

小倉義光著 一般気象学   東京大学出版会

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