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雲と靄(もや)の違い
雲と靄はいずれも空気中に出来た液滴であるが、雲を構成する液滴(雲粒)が拡散・併合によって液滴径を拡大し雨粒になる可能性があるのに対し、靄を構成する液滴はその径を拡大することなく(拡大できず)、気温の上昇や相対湿度の低下によって消えるまで空気中に漂い続けるだけであるという点が異なっている。以下、この違いを少し詳しく説明する。
液滴の発生
飽和あるいは過飽和の空気中に液滴が凝結するかどうかは雲の発生にかかわる重要な問題であるが、空気が凝結核を含む場合は、その凝結核の種類および液滴に含まれる凝結核の量によって、凝結するときの相対湿度や過飽和度が異なることが知られている。図1には横軸に液滴半径、縦軸に相対湿度と過飽和度をとり、純水と様々な食塩エアロゾルの質量について液滴径とそれに平衡する飽和度・過飽和度との関係を示してある。図1中、1の曲線は質量10(-19)kgの食塩を、2の曲線は質量10(-18)kgの食塩を、3の曲線は質量10(-17)kgの食塩を、4の曲線は質量10(-16)kgの食塩を含む場合を示している。いずれの場合も、液滴径が大きくなれば液滴の食塩濃度は低くなるため、純水が示す曲線に近づいていくのがわかる。
(補足)
上記説明はことばを変えて言えば、1の曲線は空気中に漂う質量10(-19)kgの食塩エアロゾル粒子に水蒸気が凝結した場合、2の曲線は空気中に漂う質量10(-18)kgの食塩エアロゾル粒子に水蒸気が凝結した場合、3の曲線は空気中に漂う質量10(-17)kgの食塩エアロゾル粒子に水蒸気が凝結した場合、4の曲線は 空気中に漂う質量10(-16)kgの食塩エアロゾル粒子に水蒸気が凝結した場合の液滴の径の変化と飽和蒸気圧および過飽和度の関係を示したものである。ここで
( )内の数値は指数を表している。例えば 10(-19) は10のマイナス19乗のことである。

靄(もや)
いま、図1の曲線1で過飽和度0.2、液滴半径0.13μmの液滴について考えてみることにする。液滴に水蒸気が凝結し液滴半径が増大しようとしても、液滴径が増大するためには空気の過飽和度が上がらなければならない。しかし、実際には過飽和度は0.2のままであるから、液滴径は増大することは出来ない。逆に液滴から水が蒸発して液滴径が小さくなろうとしても、液滴径が小さくなるためには空気の過飽和度が小さくならなければならない。しかるに過飽和度は 0.2のままであるから、液滴径は小さくなることは出来ない。このように、図1の曲線で液滴径の増大が相対湿度や過飽和度の増加を必要とする(曲線が右上がりの)範囲にある液滴は、温度上昇や相対湿度の減少により液滴が消滅するまで、その径を変化することなく空中に漂い続けることになる。これが靄の正体である。
雲
靄の場合とは異なり、図1のそれぞれの曲線において、 液滴の増大に伴って平衡する相対湿度や過飽和度が小さくなる(曲線が右下がりの)範囲にある液滴は、その液滴に水蒸気が凝結し液滴径が増大しても平衡となる相対湿度や過飽和度は実際の空気の相対湿度や過飽和度より低くて良いわけである。したがって、液滴にはさらに水蒸気が凝結しやすくなり液滴径は増加し続けることができ、拡散・併合を経て雨粒となることもできる。これが雲である。
霧
霧は地上に発生した雲である。霧が発生するには湿った空気の温度が露点まで下がるか、空気が飽和するまで水蒸気が加えられたか、この両者が同時に起こるかした場合である。霧はその発生原因によって次のように分類される。
放射霧
夜間、晴れた夜、赤外放射によって地面が冷やされ、それに接した空気の温度が下がり明け方霧が発生することがある。これが放射霧である。
移流霧
暖かい空気が温度の低い地表面や海面上に移動し、冷やされてできる霧が移流霧である。黒潮の上にあった暖かい空気が南寄りの風とともに北上し、冷たい親潮の上で冷やされてできる海霧が代表的なものである。
蒸気霧
水蒸気を多く含んだ暖かい空気が周りの冷たい空気と混合し飽和に達してできる霧である。混合霧とも言う。温泉の湯けむり、コーヒー・紅茶の湯気も同じである。極地方で秋や冬に発生する海霧はこの蒸気霧である。
前線霧
温暖前線で長時間雨が降り続き相対湿度が高くなったところへ、上空の暖気から比較的高温の雨粒が落下して霧が発生することがある。これが前線霧である。
上昇霧
山の斜面に沿って空気が断熱上昇し温度が下がり露点以下になり雲が発生する。遠くから眺めれば山に雲がかかったのであるが、山の中にいる人は霧に包まれているわけである。これが上昇霧である。
参考テキスト
小倉義光著 一般気象学 東京大学出版会
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