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運動制御の成否を左右する制御曲線の決定|等加速度曲線の問題と変形台形曲線

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運動制御の成否を左右する制御曲線の決定|等加速度曲線の問題と変形台形曲線

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はじめに

 機械装置等において可動部端末や駆動力伝達部を高速・かつ高精度で制御する場合、制御曲線をどう設計するかは目的を実現するために極めて重要な問題である。本記事では、簡単な事例を取り上げ、設計がどのような手順で行われるか、また変位と速度、加速度、加速度の変化率などの意味を説明するとともに、等加速度曲線の問題とその問題を解決する変形台形曲線についても説明する。

位置の制御曲線の決定

 1サイクルの時間短縮が技術的な問題でなく、可搬荷重など力の大きさや可動範囲などが問題となる大型の産業機械などは別であるが、高速・高精度が要求される機械や機械装置では、求められる仕様から1サイクルの時間を決定し、1サイクル間の位置や角度の変位からなる曲線(位置の制御曲線)をまず決定する必要がある。
 図1はある機械装置端末$M$の1サイクルにおける位置制御を示す曲線である。横軸が時間、縦軸が位置を示しており、1サイクルに要する時間が$t_5$である。装置端末$M$は、ある目的例えばミクロン単位の金属溶着や金属拡散などのため位置$s_1$と位置$s_2$で作業に必要な一定時間停止するが、それ以外の時間は基点から$s_1$までの移動、$s_1$から$s_2$までの移動、$s_2$から基点までの移動に要する時間である。

図1.位置の制御曲線

 ミクロン単位の金属拡散の場合、作業に要する時間は数十ミリセカントのオーダーであり、それに若干の余裕を加え 図の$t_1$、$t_2$間や$t_3$、$t_4$間の時間を決定する。この時間に基点から$s_1$までの移動、$s_1$から$s_2$までの移動、$s_2$から基点までの移動に要する時間を加えて1サイクルに要する時間が決まるため、移動に要する時間を短くするとともに必要な駆動力をいかに小さくするかが設計のポイントとなる。

位置移動する部品の制御曲線の決定

 機械装置端末$M$が位置移動する箇所の制御曲線を決定する場合、2つの相反する問題がある。一つは出来るだけ短時間で滑らかな運動で移動を実現することであり、もう一つは出来るだけ小さな駆動力で実現することである。
 短時間で移動するには大きな加速度で移動することが必要であり駆動に大きな力やトルクが必要となる。また、同じ加速度で移動するための駆動力を小さくするには可動部や可動端末の軽量化が必要となる。

 以上の観点から実際の設計においては、必要な力やトルクが伝達可能な形状で軽量化 (下記補足) を図り、移動時の加速度をほぼ一定に保ち移動時間を短縮することが設計課題となる。

(補足) 必要な力やトルクが伝達可能な形状で軽量化
 力を伝達するレバーなどでは、曲げ方向($y$方向)の断面2次モーメント($\int y^2dS$)を大きくして軽量化をはかる。その1例がエンジンのピストンロッドの断面形状である。

4B11 2.2L KIT:
図2.ピストンロッド(HKSのHPより引用)

 実際に稼働している高速・高精度の機械装置の例では、移動距離5mm程度であれば移動時間30msecから50msecくらいが普通であろうか。
 

位置、速度、加速度の関係

 物体の位置$s$の時間的変化がわかっているとき、物体の速度$v$、加速度$a$を$s$で表せば、速度$v$は位置$s$の時間微分であり、

$v=\dfrac{ds}{dt}$ ・・・①

加速度$a$は、速度$v$の時間微分であり、

$a=\dfrac{dv}{dt}=\dfrac{d^2s}{dt^2}$ ・・・②

となる。

 逆に物体の加速度が一定値$a$が与えられたとき、時間$t$における物体の速度$v$、位置$s$を$a$で表せば、$t=0$における速度、位置を$0$とすれば、

$v=\int adt=at$ ・・・③

$s=\int atdt=\dfrac{1}{2} at^2$ ・・・④

④式から、加速度が一定値$a$であるとき、物体が$h$移動するのに要する時間$t_m$は、

$t_m=\sqrt (\dfrac{2h}{a})$ ・・・⑤

移動距離$h$を時間$t$で移動するのに必要な加速度$a$は④式から、

$a=\dfrac{2h}{t^2}$ ・・・⑥

等加速度曲線

 図1の変位曲線の最初の部分$t_1$時間に距離$s_1$移動する部分を考える。この間の加速度曲線に等加速度曲線を選べば、$t=0$で速度$0$から加速し、$t_1$で距離$s_1$に達したときには速度$0$になる必要があるから、加減速曲線は図3のように加速域と減速域が必要となる。図で横軸は時間を、縦軸は加速度を表している。
 $t_1$で移動を完了するには、$\dfrac{t_1}{2}$時間加速度$a_1$で加速した後、 $\dfrac{t_1}{2}$時間加速度$-a_1$で加速(減速)し、速度$0$で移動を完了する。すなわち、$\dfrac{t_1}{2}$時間で$\dfrac{s_1}{2}$の距離を移動するわけであるから、この場合の$a_1$を⑥式を用いて求めれば、次のようになる。

$a_1=\dfrac{2×\dfrac{s_1}{2}}{(\dfrac{t_1}{2})^2}$  ・・・⑦

図3.等加速度曲線を用いた加減速曲線

 以下、同様にして図1の$t_2 t_3$間、$t_4 t_5$間の加速度を求める。

 上記した手順で1サイクル間の制御曲線を決め、1サイクル間で最大となる加速度を求める。加速度が求まればニュートンの運動方程式により駆動力が求まり、伝達部の必要強度が求まるとともに、駆動モーターの選定が可能になる。

 したがって、機械設計においては要求仕様実現のため最大加速度を求めることは最初に行う技術課題である。また、最短時間で距離移動をすること、1サイクル中の最大加速度を小さくするには、次項で述べる問題が無くば等加速度で移動するのが良いということになる。

(補足)
 実際の設計では、最大加速度が決まった後、駆動力や伝達力を求め部品設計をする段階で部品質量を小さくすれば駆動力や伝達力も小さく出来るため、計算を繰り返して部品形状を決定して部品質量が決定し、必要最軽量の駆動モーター等の決定をする。

等加速度制御の問題

 ニュートンの運動方程式

$F=ma$ ・・・⑧

から、物体に作用する力$F$は、物体の質量$m$と物体に生ずる加速度$a$の積に等しいことから、図3の等加速度曲線による運動においては、加速度が変化する点、$t=0$、$t=\dfrac{t_1}{2}$、$t=t_1$以外では、質量$m$の可動端末に作用する力$F$は、$F=m×a_1$または$F=-m×a_1$と一定である。

 しかし、 加速度が変化する点、すなわち$t=0$、$t=\dfrac{t_1}{2}$、$t=t_1$においては、加速度の変化率(躍動$\dfrac{da}{dt}$)は無限大またはマイナス無限大となる。 これは電気信号で言えばパルス信号に相当するものであるが、機械力学においては衝撃荷重が加わること(ハンマリング)に相当する。すなわち1回の加減速で3回のハンマリングが生ずることになる。

 図1の制御のように1サイクルで3回の加減速があれば、1サイクルあたり9回のハンマリングが生ずることになる。機械装置において衝撃荷重やハンマリングなどの目的の制御上意味のない加振力は、共振現象による装置破壊にもつながるため除去すべきものである。したがって、等加速度曲線はそのままでは実用出来ず、加減速が切り替わる箇所の躍動を有限値にする修正を加えた加速度曲線が用いられる。

変形台形曲線

 制御曲線として実用上優れているとしてよく使われているのが図4に示す変形台形曲線である。図4からわかるように、変形台形曲線とは、等加速度曲線において加速度が不連続に変化する2点(図3の$t=0およびt=\dfrac{t_1}{2}$の2点)それぞれの前後$\dfrac{1}{8}$の区間(合計 $\dfrac{1}{8}×4 $ すなわち全体の$\dfrac{1}{2}$)を三角関数に置き換えたものである。より詳しく言えば、加減速に要する全体の時間(例えば図1の$0-t_1間$)を$t_1$、最大加速度を$a_1$としたとき、$0-\dfrac{t_1}{8}$間の加速度を$a_1sin(\dfrac{4π}{t_1})t$とし、$\dfrac{t_1}{8}-\dfrac{3t_1}{8}$間の加速度を$a_1$とし、$\dfrac{3t_1}{8}-\dfrac{5t_1}{8}$間の加速度を$a_1sin(\dfrac{4π}{t_1})(t-\dfrac{t_1}{4})$とし、$\dfrac{5t_1}{8}-\dfrac{7t_1}{8}$間の加速度を$-a_1$とし、$\dfrac{7t_1}{8}-t_1$間の加速度を$a_1sin(\dfrac{4π}{t_1})(t-\dfrac{t_1}{2})$として定義するものである。

図4.変形台形曲線の加速度図

このように定義した変形台形曲線において加速度$a$の時間変化率(躍動j=$\dfrac{da}{dt}$)は、加速度の定義式を時間微分すればよい。

 加速度式を微分してこれを求めれば、$0-\dfrac{t_1}{8}$間の躍動は、$\dfrac{4π}{t_1}cos(\dfrac{4π}{t_1}t)$、$\dfrac{t_1}{8}-\dfrac{3t_1}{8}$間の躍動は$0$、$\dfrac{3t_1}{8}-\dfrac{5t_1}{8}$間の躍動は$\dfrac{4π}{t_1}cos\dfrac{4π}{t_1}(t-\dfrac{t_1}{4})$、$\dfrac{5t_1}{8}-\dfrac{7t_1}{8}$間の躍動は$0$、$\dfrac{7t_1}{8}-t_1$間の躍動は$\dfrac{4π}{t_1}cos\dfrac{4π}{t_1}(t-\dfrac{t_1}{2})$となる。

 これを図示したのが図5である。図で横軸は時間 であり、加減速に要する全体の時間(例えば図1の$0-t_1間$)を$t_1$、最大加速度を$a_1$とし、縦軸に加速度の速度微分(躍動)の値を取っている。図から変形台形曲線では躍動は等加速度曲線のように無限値を取ることなく最大値は有限値$\dfrac{4π}{t_1}$を取ることがわかる。

図5.変形台形曲線の躍動図

 実際の設計においては決定した加速度に対する変形台形曲線を$\dfrac{1}{8}$区間ごとに積分して、$0-t_1$間の速度式を求め、この速度式をさらに $\dfrac{1}{8}$区間ごとに積分して $0-t_1$間の変位式を求める。

 このようにして図1の1サイクルの変位式を求め、その実現手段としてカム駆動ならばカム設計を、サーボモーターでボールねじ駆動するならばモーター駆動プログラムを設計する。

 加速度式から速度式を求めるのも、速度式から変位式を求めるのも三角関数の積分であり、初期条件と区間の接続点における位置、速度、加速度の連続条件を確認して作業を進めれば高校数学の積分であり、難しくはないのでこの先の説明は割愛する。

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