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賢女の会話(no.12)|原発の事故:燃料棒損傷、圧力容器の脆弱化、制御棒脱落等

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短大時代の同窓生である愛子、正子、節子、知子、信子の5人は、卒業13年後の同窓会で顔を合わせて以来、育児のことなどで時々会って話し合いを持つようになった。愛子の誘いで顔を会わせた際、皆で原発問題を勉強しようと言うことになり、先回は原発を運転することによって出来る放射性物質について話し合ったが、第三回目の今回は原発装置の問題点について話し合うことになっていた。今日は喫茶店で軽食を取りながらの話合いである。

今回は、原発の装置としての諸問題として、放射性物質の外部への漏れ、ジルコニウムと高温水の発熱反応で水素が発生すること、原子炉の運転で発生する中性子の影響で原子炉が割れやすくなること、制御棒が脱落すれば原子炉が暴走する危険性があることについて話しあった。

原発(装置)の問題点

知子「愛子、正子もう来ていたの、早いわね」

愛子「私と正子は市内で地下鉄一本で来られるからね。でも信子も節子ももう来ると思うわ、駅で見かけたから」

知子「あら声をかけなかったの」

愛子「誰か知りあいの方とお話していたからかけなかったわ。でも向こうも気づいて手を振っていたからもう来ると思うわよ」

信子、節子「皆さんお待たせ、私達が最後だったわね」

正子「ところで、今日は原発の問題点について話し合うと言うことだけれど、私達にとって難しい問題よね。知子や愛子はご主人が技術者だから聞くことが出来てよいけれど、私や節子は夫が文系出身だし、信子のところはご主人が海外単身赴任中だし」

放射性物質の外部への漏れ

節子「そうね、原発の問題点って何があるのかしら」

知子「一言で言えば、危険な核燃料を扱うため、それが外界に漏れ出ないように何重にもシールドされているけれど、いろいろなことが原因でそれが外に漏れ出す危険性があると言うことよ」

節子「漏れ出す原因って何があるの」

知子「核燃料を燃やしている原子炉では燃料棒の表面温度を300℃程度に保つため水(一次冷却水)を循環しているのだけれど、その水に放射性物質が溶け出して来るのよ」

正子「一次冷却水は海水から取り込んだ水(二次冷却水)で冷やされるけれど、一次冷却水と二次冷却水は金属の壁で分離されているのでしょう」

知子「高温高圧の水を循環させているうちに、その壁も損傷するのよ。そうすると二次冷却水中に放射性物質が漏れ出し、海が汚染されることになるの。微量な漏れは日常的と考えた方がよいけれど、もっと大きな問題があるのよ」

ジルコニウム(燃料棒の鞘)と高温水の発熱反応で水素が発生

信子「電源損失などで冷却水が循環出来なくなったり、管路の損傷によって冷却水が漏れて原子炉内の水位が下がると原子炉内の水温が上昇するわけでしょう。福島の場合がそうだったのは聞いているけれど、その場合何が起こるのよ」

知子「燃料のウランはジルコニウムと言う金属の鞘に詰められており、原子炉内でジルコニウムと一次冷却水が接触しているのね。で、このジルコニウムと言う金属は850℃になると水と激しく反応(発熱反応)して水素を発生するのよ。そうならないよう、原子炉内の水温を300℃くらいに保つよう冷却水を高速で循環しているのだけれど、何らかの理由で冷却が出来ず温度が上がると大変なことになるのよ」

愛子「ジルコニウムの鞘が高温の水と反応したことが福島原発のメルトダウンの原因の一つと考えられているのよ。その上その時発生した水素が爆発して建屋を吹き飛ばしているでしょう。電源損失に限らず、冷却系に不具合があれば起こり得ることよ」

中性子照射によって原子炉の脆性遷移温度が上昇

節子「他にどんな問題があるのかしら」

愛子「主人から聞いたのだけれど、原発も古くなると原子炉自体が割れやすくなるから使用年数の延長は止めるべきようよ」

正子「もう少し詳しく話してよ。原子炉(圧力容器)って金属で出来ているんでしょう。金属がガラスのように割れたりしないでしょう」

愛子「金属は常温では力が加わっても変形するだけで割れたりしないわよね。金属のそのような変形しやすさを展延性(てんえんせい)と言うのだそうだけれど、金属の温度をどんどん下げて行くと、ある温度から力が加わった時割れるような性質に変化するんですって。この割れやすい性質を脆性(ぜいせい)と言うのだそうだけれど、金属の性質が展延性から脆性に変化する温度を脆性遷移温度(ぜいせいせんいおんど)と言うのよ。」

知子「私も主人から聞いたのだけれど、例の豪華客船タイタニック号も氷山があるような零度近い海を航行していたため、金属の展延性が低下しており、氷山と衝突した際船体の割れ方が大きくなり、浸水が急激に起こった可能性があるそうよ」

正子「まだよく飲み込めないわ。原子炉って常温以上で運転されているんじゃないの」

愛子「今話した脆性遷移温度は金属では普通氷点(0℃)以下なのだけれど、原子炉内でウランの核分裂によって発生する大量の中性子の照射を受け続けることにより、常温以上に上昇して来るのよ。例えば何十年と運転している原子炉では脆性遷移温度が50℃以上になってきたりするのよ」

信子「じゃあ福島原発事故の場合のように、原子炉内の水位が何らかのトラブルで低下した場合、常温の海水や水などを大量に投入した場合に力が加わると原子炉が割れる危険性があるというわけね」

正子「じゃあ、福島原発事故でも原子炉が割れる可能性があったわけね」

知子「そうなのよ。力と言っても何も外から加わる力だけじゃなく、原子炉全体の温度分布や温度勾配により熱的な力は加わっているわけだから、怖いわよね」

関連記事:https://marisuke.com/archives/1098

制御棒が脱落すれば原子炉が暴走

愛子「あと、原子炉には制御棒と言うのがあって、これを原子炉内に出し入れして核反応を制御しているの。制御棒を原子炉内に深く挿入すれば核反応を抑制(核反応速度を遅く)し、制御棒の挿入を浅くするほど核反応が激しく(核反応速度が速く)なるのよ。それで、原発で事故が起こると、制御棒を緊急挿入するようにシステムが設計されているのよ。福島原発でも事故発生と同時に制御棒が挿入されて、出力を瞬時に定格の0.7%まで落としているのだけれど、その事故でさえ未だ収束していないありさまでしょう」

知子「だから原発事故の最悪な場合、つまり事故発生時に制御棒挿入も出来なかった場合、その惨状はとんでもないものになるわけよ。今回の福島原発事故の何十倍の冷却水がいることになるわ」

信子「福島原発では、冷却水の保管場所も無く、大量の水が海に流れ出したりしたわけよね。その何十倍の水が要ると言ったらとんでもないものよね。放射性物質の環境中への放出も今回の福島原発事故の比ではなくなるし」

正子「今日私達が話していることって、多くの人は知らないのじゃないかしら。私達、知った者が周囲に知らしめて行かなければいけないわね」

節子「本当だわ。他人ごとじゃないわよね。もう一度福島級の事故が起こったら日本は間違いなく世界の三流国になるわね」

愛子「今日の話はチョッと難しかったわね。主人から手に入れた資料を渡すから、後で読んでおいてね。今日の話の後だから、大体理解できると思うから」

信子「愛子と知子からいろいろ聞かせて貰って、今日は少し原発のことがわかった気がしたわ。じゃあ、次回は私が連絡するわね。それじゃあまた」

次の会話:https://marisuke.com/archives/923

最初の会話:https://marisuke.com/archives/486

関連記事:https://marisuke.com/archives/1031

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