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賢女の会話(no.13)|再処理の利点と問題点、放射性廃棄物(核のゴミ)の地層処分

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短大時代の同窓生である愛子、正子、節子、知子、信子の5人は、卒業13年後の同窓会で顔を合わせて以来、育児のことなどで時々会って話し合いを持つようになった。皆で原発問題を勉強しようと言うことになり、今回はその第四回目で、ウナギの名店○○軒でウナギを食べながらの話合うことになっている。

今回は、再処理と放射性廃棄物に関し、再処理を行う理由と再処理の問題点、欧州における再処理工場による汚染、核のゴミの地層処分の問題などについて話し合った。

再処理と放射性廃棄物

信子「愛子、知子!  みんな、こちらよ」

愛子、知子「信子、何時に来たの」

信子「一時間前よ。でもまだしばらく待たないとダメなようね」

知子「ここは全国的に有名だから、いつも二時間くらい並ばないと食べられないものね。今日は一年ぶりで美味しいうなぎが食べられるから楽しみだわ」

愛子「信子が並んでくれてたから、長い時間並ばなくて済んだしね。あっ、節子と正子も来たわよ」

節子、正子「みんな、お待たせ。まだ席に着くまでしばらくかかりそうね。ここで話し始めましょうか」

信子「みなに連絡しておいたように、今日は再処理と放射性廃棄物について勉強したいと思っているの。私も(核廃棄物の)再処理の問題について調べたのだけれど、あまりよく解らないのよ」

正子「どんな点が分らないの」

再処理をする理由と再処理の問題点

信子「なぜ再処理をするのかという点と、再処理のどんな点が問題なのかという点よ」

節子「私は核のゴミの地層処理がどういう問題があるかよくわからないわ」

正子「じゃあ、最初に再処理の方から行きましょうか。知子か愛子、簡単に説明してよ」

愛子「ウランと言うのは地球上にあまり無い資源なのよ。それで、燃料の燃えカス中に残っているウランとプルトニウムを回収して再利用しようと言うのが再処理のもともとの考えなのよ」

知子「再処理の利点は他にもあって、高レベル放射性廃棄物の量が減ることと、無毒化に要する時間が短縮すると言うことよ」

節子「無毒化に要する時間と言うのはどういうこと」

知子「環境中にあって、人体に害を及ぼさなくなるまで放射能量が減少するのに必要な時間のことよ」

節子「じゃあ、再処理した方がいいわけじゃないの」

知子「ところが再処理には問題が多いのよ」

節子「どんな問題があるのかしら」

知子「再処理しない場合に比べて、再処理をするだけ余分な費用がかかるのよ。でも費用よりももっと深刻な問題があるのよ」

愛子「そうなのよ。再処理工場には、原発にあるような圧力容器や格納容器に相当する、放射性物資を閉じ込める頑丈な構造物は無いのよ。そして核廃棄物をせん断したり(切り刻んだり)、溶融したり、精製したりする化学工場であるため、日常的に大気中や海水中に放射性物質を垂れ流すのよ」

信子「それは許容された安全な量じゃないの? 」

愛子「六ケ所村の再処理工場からは、大気中、海水中へと常時放射性物質が放出されるのだけれど、国は拡散して希釈されるから環境汚染は無いとしているのよ。でも、そのように放出しなければ工場の操業が出来ないから、法律上で許容値以下と規定しているのよ」

知子「原発が地球上で稼働するようになってまだ五十年そこそこでしょう。現時点で基準値なんて解らないのよ。放射線なんて微量でも浴びない方が良いに決まっているんだから」

ヨーロッパにおける再処理工場からの廃棄物による汚染

正子「再処理工場が30年以上運転されているヨーロッパからは、膨大な放射能放出による環境汚染、人体への影響が報告されているわよ。フランスのラ・アーグ再処理工場周辺では、小児白血病の発症率がフランス平均の約3倍にのぼるというレポートが発表されているし、イギリスのセラフィールド再処理工場からの放射能によって汚染されたアイリッシュ海をめぐっては、対岸のアイルランド政府がイギリス政府を訴える事態に発展しているわよ」

知子「正子、よく知っているわね。私も同じことを夫から聞いたわ。北海が汚染されていることはヨーロッパでは周知のことみたいよ、だからノルウェー産のオイルサーディンの缶詰なんかも食べない方がいいんじゃないかしら」

節子「本当? 大変、私んち時々オイルサーディンの缶詰を食べているわよ」

知子「六ケ所村の再処理工場の廃液の中にはアルファ放射体(アルファ線を出す放射性物質)も含まれていることを考えると、ヨーロッパでも同じよね。そしてアルファ放射線は検査に引っかからないから食べないに越したことはないわね」

節子「今日の話、聞いて良かったわ。聞いてなかったら、今迄通り食べ続けていたと思うわ」

核のゴミの地層処分の問題

正子「じゃあ、次に核のゴミの処理の問題に移りましょうか。核のゴミの処理にはどういう問題があるのかしら。そもそも地層処分ってどうするのよ」

愛子「深さ数百~1000mの安定な地質環境に核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)を埋め,廃棄物からの放射能を何十万年という長期にわたって人間の生活環境から安全に隔離するわけよ」

信子「どんな形で埋められるの?」

愛子「高レベル廃棄物をガラスに混ぜて溶かし、これをステンレス製の容器(キャニスター)に封入して地下深くに埋めるわけなのよ。でも放射性物質が無害になるのに何十万年とかかかるのに、そのステンレス製の容器がそんなに持つ筈がないのよ」

信子「そうするとどうなるの?」

愛子「ガラス固化体から溶け出した放射性物質が地下水を汚染するわけでしょう。そしてそれがどんな循環で私達の生活圏に入って来るか分らないでしょう」

信子「そうね、日本の周辺では移動する地殻(プレート)が互いにぶつかり合っているわよね。容器が破損したら環境が汚染されると考える方が自然よね」

ヨーロッパと日本の岩盤の違い

知子「国は、容器という人工バリアと粘土層という自然バリアの多重バリアによって放射性物質を長期に安全に閉じ込められると主張しているのだけれど、何億年と変化しない岩盤の上にあるヨーロッパとは地質学的に全く違うわけでしょう」

節子「日本が地震国であることを考えると地下処分と言うのは心配よね」

正子「本当よね。あら、やっと順番が来たわよ、もうすぐ食べられそうね。私、今日は櫃まぶしを食べようかしら」

信子「正子、櫃まぶし好きだものね。今日の問題はもっと勉強する必要があるわね」

正子「そうね、後世に負の遺産を残さないようにするためにも、私達の世代が正しい選択をしなくちゃいけないわ」

愛子「ところで次回のテーマはどうしようかしら」

正子「原発事故が起きた場合の放射性物質による大気と海洋の汚染ってのはどうかしら。私が幹事をするわよ」

節子「面白いわね、それ。そう言えば正子、気象に詳しいわよね」

正子「私の弟が気象予報士なのよ。だから、この間から、福島原発による大気と海洋の汚染のことを聞かせて貰っているのよ」

信子「正子の弟さんって、いま大学生だったでしょう」

正子「工学部なのだけれど、地学が好きで趣味で資格を取ったのよ」

愛子「次回もいろいろと教えてもらえるわね。楽しみだわ、正子、よろしくね」

知子「あっ、もう呼ばれるわよ。じゃあ難しい話はこれくらいにして、只今より食べることに専念しましょうか」

愛子、正子、信子、節子「賛成! そうしましょうよ。賢女は切り替えが大事なんだものね」

補足(地層処分する地盤の安定性の問題)

地層処分する地盤の問題として、ヨーロッパは、地震の発生が少なく、かつ何億年レベルで変化のない岩盤深くに地層処分することが出来るが、たがいに移動する四つのプレートがぶつかり合う、安定した岩盤を持たない地震大国の日本においては、地下の変動も大きく、何万年と放射能を放出する廃棄物の地層処分は危険と言わざるを得ない。

日本政府が推進しているガラス固化体地層処分の基本概念は,深さ数百~1000mの安定な地質環境に,“人工バリア”と“天然バリア”からなる“多重バリアシステム”を構築して,廃棄物からの放射能を何十万年という長期にわたって人間の生活環境から安全に隔離するというものである.“人工バリア”とは,ガラス固化体と,それを封入する“オーバーパック”(厚さ19cm程度の炭素鋼などで作った円筒容器,耐用年数1000年を想定)と,それを包む緩衝材(厚さ70cm程度の粘土)とを指す.“天然バリア”というのは,人工バリアから先の天然の地質のことである.

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地層処分が成り立つためには,まず第一に,地層処分場が長期にわたって十分に安定であること(地質環境の長期安定性)と,岩盤と地下水の物理的・化学的性質(地質環境の特性)が適切であることが必須である.しかし,地下深部の地質環境の特性に関しては,世界有数の変動帯であると同時に温帯を中心に亜寒帯から亜熱帯の多雨帯に位置する日本列島では,破砕度が激しい岩盤の亀裂の状況や地下水の複雑な挙動について,わかっていないことのほうが圧倒的に多い.

次の話題:https://marisuke.com/archives/932

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