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日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の発生機構

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日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の発生機構

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2022年 白川村・関ケ原の大雪

 2022年2月17日、冬型の強い寒気が流れ込んだ影響で岐阜県内はまとまった雪が降り、大野郡白川村では積雪が2メートルを超えた。同村では、2月に入ってから連日のように雪が降り、17日午後6時までの48時間降雪量は96センチで全国1位を記録した。
 伊吹山の麓に位置する関ケ原では、駐車場の路面が積もった雪で見えなくなった。同町では今月5日から6日にかけて記録的な大雪となり、6日に91センチの観測を始めた1997年以降で最も深く積もった。

国道21号沿いの歩道を雪かきする男性=6日午後0時50分、不破郡関ケ原町関ケ原
図1。
図1.関ケ原の大雪(2022年2月6日、91cmの積雪:岐阜新聞より引用)

 日本海側の大雪の原因は、日本海上に発達した筋状の雲と「日本海寒帯気団収束帯」(JPCZ)である。特に白川村や関ケ原などの記録的な大雪は「日本海寒帯気団収束帯」(JPCZ)が原因であることがわかっている。。

JPCZ(日本海寒帯気団収束帯 )

 JPCZとは、 Japan sea=「日本海」、Polar air mass=「寒帯気団」、Convergence=「収束」、Zone=「帯」の頭文字をとったもので、冬季日本海上で形成される、長さ1,000km程度の収束帯のことである。

図2. JPCZ(ウィキペデイアより引用)


 冬季、シベリア大陸から強い寒気が南下するとき、 朝鮮半島北部に位置する長白山脈(図2の赤丸の箇所) で2つの流れに分断(図2の青の矢印)され山脈後方に乱れた流れを形成して日本海上で再び合流(収束)する。 収束した寒気は他の場所の筋状の雲よりも雲粒密度が高く雲頂高度が高い大きな帯状(長さ1,000kmほど)の雲を作る。これが日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)(図2の黄色の線の箇所)である。

 冬季に日本海上で発達した筋状の雲が日本海側に大雪を降らせることはよく知られているが、筋状の雲が収束して出来たような日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)はさらに大雪をもたらすものであり、災害対策上も監視の欠かせないものである。

JPCZの雲粒密度が大きくなる理由

 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ) の雲粒密度が高くなるのは、山脈で分断された寒気は、負圧になった山脈後方で渦を作り長い距離にわたって乱れた流れを作る。乱れた流れの中では雲粒がぶつかりやすく、分断された寒気が合流(収束)する時にも雲粒がぶつかりやすいことから、他の場所の筋状の雲よりも雲粒が大きくなりやすく雲粒密度も上がる。また、下方が海面で行き場がないため、収束した流れは上昇気流を発生しやすい。

障害物周りの流体の流れⅠ

円柱の場合

 図3は流体中(速度V中)に置かれた円柱周りの流体の様子を示したものであるが、円柱の下流側では負圧により渦が発生していることがわかる。流れに置かれた障害物が円柱形状の場合、レイノルズ数Reが120以上であると、円柱の風下側で千鳥形に配列した2列の渦の列が出来、円柱の後方長い距離にわたって交互に渦が出ていくことが知られている。

図3.流体中の置かれた円柱周りの流れ

 流体中に置かれた障害物後方における流れの乱れは、障害物の大きさや表面形状や表面粗さによって異なり、障害物が大きいほど、また表面形状が複雑になるほどまた表面あらさが粗いほど大きくなる。障害物近傍の流れは障害物後方で渦を作るが、障害物が大きい場合、障害物で2つに分断された流れは、障害物後方に長く乱れた状態の流れを作りながら収束する。そして、下方が地表面や海面で行き場がないとき上方へと向かう。大陸から吹き出す寒気の場合は収束帯で上昇気流を発生しやすくなる。

レイノルズ数(Re)

 レイノルズ数Reは次の式で定義される。

      Re=Vd/ν

ここでVは流体の速度(m/s)、dは流体中に置かれた円柱の直径(m)、ν(ニュー)は動粘性係数で=μ/ρで定義される。μ(ミュー)は粘性係数(kg/ms)、ρ(ロー)は密度(kg/m3)である。

障害物周りの流体の流れⅡ

 流体中の物体周りの流れに関する補足を以下に記載します。

弾丸の場合

 流体の動きを扱う流体工学において、流体中の障害物周りの流れをどのようにするかは重要な問題である。流体の流れを流線というが、流線は滑らかに方向を変えることは出来るが、急に方向を変えることは出来ない。流線が入り乱れず流れる場合を層流といい、流線が入り乱れて流れる場合を乱流という。

図4.弾丸の周りの空気の流れ

 図4は弾丸の周りの空気の流れの模式図であるが、頭部で分断された空気は尾部を通過した後、弾丸背部に層流の状態を維持したまま回り込むことはできず、乱れて渦を巻いて弾丸背部に回り込む。弾丸に座標を固定すれば、弾丸後部で空気は乱流となって流れていく。

回遊魚の場合

 図5は魚の周りの海水の流れを示したものであるが、海洋を高速で泳ぎ回る回遊魚などは胴体から尾びれの付け根に向かって順次細くなっており、尾びれ後方の流れは乱れず(渦が発生することなく)層流となっている。

図5.魚の周りの海水の流れ

潜水艦の場合

 図6はこの形状を利用した潜水艦で、潜水艦後方で渦の発生を抑え滑らかな流れとなるようにしている。潜水艦にとって相手の艦船などのソナーで探知されないよう、周囲の流れを乱さないことが必要不可欠であるためである。

図6.潜水艦の周りの海水の流れ

ヒマラヤ山脈と日本の梅雨

 山岳地帯や山脈などの障害物により大気の流れが分断され、その障害物の後方に出来る大気の乱れや収束帯における上昇気流などによって日本の気候に影響を及ぼすものには、上記の 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)以外に日本の梅雨がある。

 冬季、ヒマラヤ山脈の南側を流れていたジェット気流が太陽の北上(南回帰線から赤道へ向けて移動すること)によりヒマラヤ山脈で分断されるようになり、山脈後方でジェット気流の乱れや収束が生ずるようになると梅雨前線が形成され、日本に梅雨が到来する。そしてさらに太陽が北上(赤道から北回帰線へ向けて移動)し、ジェット気流がヒマラヤ山脈の北側を流れるようになると梅雨前線が消滅し、日本の梅雨があけるいわれている。

 ヒマラヤ山脈は8,000m級の山々が連なるもので朝鮮半島北部の長白山脈と比べようもなく大きいので、その後方の大気の乱れも遥かに大きく、 日本海寒帯気団収束帯(JPCZ) より遥かに規模の大きい(中国大陸から日本まで続くこともあるような)梅雨前線が長期間にわたって出現する。

参考文献

古屋善正、村上光清、山田豊著 「流体工学」          朝倉書店

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